文学の宝庫、沼津~よみものや/文学サロン 山羊文庫(yagibunnko)~

2013_1020_140339-DSC_2574

【2013年の記事です。】

今年の5月末、
沼津にひとつかわいらしい古本屋さんが表れた。
それは“よみものや/文学サロン 山羊文庫”
ホームページでの販売とイベントでの出張販売や朗読会などをやっている。
山羊文庫のオーナーは27歳の古根村優佳さん。

若き女性オーナーの営む古本屋は文芸書しか取り扱っていない。
それも純文学。

なぜ文芸書しか取り扱っていないのか。
もちろん純文学が好きということがあった。
がもう一つ。“沼津には文学豊富”なことに目を向けたのだ。

井上靖、大岡信、芹沢光治良、若山牧水。。。
数々の文士とゆかりのある静岡県沼津市を、
読書を通じてもっと人とヒトが繋がることができる街にしたいと思い開店した。

写真 (1)

その原動力となったのが
“沼津で生まれ育って、やっぱりさみしいと思ったんです”
という思い。

正直古根村はさんは沼津が盛り上がっていた頃を経験している世代ではない。
それでも沼津にさみしさを感じる。
自分たちが生まれ育った街をよりよくしたいと思うことは自然なことだった。

大好きな文芸書が沼津を盛り上げると感じた。

“「沼津は文学の街なんだ。」と、市民がまず自覚し誇りを持ち、そのうえで県外にアピールしていけたらと考えています。
山羊文庫として力を入れていきたいのが、古本の販売だけではなく、人と人を読書を通してつなげることです。
読書は本来一人でする行為です。その一歩先へ踏み出してみませんか?という提案です。
「読書で人と人を繋げ、そして沼津という街の扉を開きたい」これが私の挑戦したいことです”

その想いで“よみものや/文学サロン山羊文庫”を商いとしてやることを決めた。
準備期間は半年、古本を扱うためにその業界のことを調べ上げ、古物商の資格を取り、ホームページを作り、
本を仕入れた。
古本屋の横のつながりの深さを知ったり、文学館とのつながりができたり、
今では各イベントに参加したりと発展途上のyagibunnkoの発見は続く。

写真 (3)

ただ文学に親しんでもらうだけでなく“つないでいく”ことを大切にしたい。
そう思ってから、最初にやりたかったブックイベントも少しずつ開催できるようになった。
“文学”が紡いでいく沼津とひと。
古根村さんのかわいらしい笑顔としっかりとした想いで沼津の素晴らしい文化が再発見されていく。

IMG_4800
→大好きな上土商店街にある本を読む像と一緒に

★イベントのご案内★
第一回 本のはなしをいたしましょう
開催日:11月17日(日)
時間:13:00~15:00
場所:リヴァージュ洋菓子店
沼津市下香貫柿原2885-2
055-931-4215

よみものや/文芸サロンyagibunnko
tel:080-2613-4563

食をつなぐ魚市場

numazu-journal6

街がまだ眠りについている早朝5時、すでに沼津魚市場INOには数多くの新鮮な魚が並ぶ。
INOは市場機能に展望デッキ、食堂など観光要素を融合させた新しい形の卸売市場である。

今回、INOを案内していただいたのは沼津魚市場株式会社、広報課の稲葉友美さん。

まず、驚くのは魚の種類の多さ。駿河湾でとれたものはもちろん、全国で水揚げされたものがここには集まる。その中でも目を引くのは駿河湾で獲れた深海魚とサバの量だ。
深海魚は主に底引き網(トロール漁法)で獲れる。
手長エビやカサゴ、メヒカリなど馴染みのものからまったく見たこともない魚まで獲れる種類は多い。

numazu-journal5

“トロール漁は9月中旬から5月中旬まで。沼津魚市場は年間350種類ぐらいの魚を扱っているんですけど、そのほとんどが深海魚です”

日本一深い海、駿河湾の特性を活かしたトロール漁が沼津の特徴だと稲葉さんは言う。
さらに驚いたことは水揚げに対するサバの占める割合の高さだ。
沼津と言えばアジが有名だが、水揚げされるのは圧倒的にサバのほうが多い。

numazu-journal

“去年度で言うと水揚げの76%はサバです。その次がイワシ、そしてアジの順です。どうしても沼津というとアジというイメージのほうが大きいですから”

魚市場では数年前からサバのブランド化を進めている。
サバを使った料理コンテストをおこないサバに親しみをもっていく取り組みや
サバの付加価値向上のプロジェクトが進んでいる。
では、なぜサバなのかその理由を稲葉さんに訊いた。

numazu-journal7

“サバがたくさん獲れるんですけど現状は値段が安いんです。ブランド化を進めることによってサバの価値を上げ、漁師さんに潤ってほしいという想いがあるんです”

魚市場を通じて多くの人々が携わる。
そのすべての人々が豊かになること。
それが最終的にたべる人のの食を豊かにする。
沼津魚市場は普段忘れがちな生産者と消費者の関係を今一度確認できるそんな場所だ。

沼津の街にはそんな海の幸を活かす料理人も多い。
御用邸の松間の饗宴では沼津魚市場の海産物も登場しシェフがお皿に演出をする。

イタリアンのサンテラスキッチンは、トロール漁の駿河湾パスタ。
中華の一歩はサバの黒酢揚げ。
フレンチのaiaiはトロール漁の魚を使ったスープドポワソン。

港街には食の豊かさが溢れている。

numazu-journal4


沼津魚市場では、セリの見学ツアーを月1回ほど実施している。
5時半に集合し約1時間半。千円で体験できる。
日程など、ホームページで確認するのがおすすめだ。

沼津魚市場INO
沼津市千本港町128-3
電話:055-962-3700
http://www.numaichi.co.jp/index.html

【HPに戻る】

自然に育まれた天城軍鶏

numazu-journal6

“生産量を増やすという形ではなく、切り口を変えたところでやっていきたいなと思って”

狩野川をさかのぼり伊豆市矢熊の川沿いにある鶏舎でインタビューに答えていただいたのは天城軍鶏を生産している堀江養鶏の3代目、堀江利彰さん。

天城軍鶏は栄養度の高いエサを与え、自由に走り回る事が出来る平飼い鶏舎を使い、ブロイラーの3倍以上の時間をかけて育てられた軍鶏だ。
飼育は120~150日くらいの時間をかけ、生き物本来の形でゆっくり育てることにより、程良くしっかりとした歯ごたえで臭みもなく育つ。
狩野川沿いに立地するため、川の風が流れることで空気が淀まないそうだ。
鶏も人間と同じでストレスを与えずに育てることが重要だ。

numazu-journal2

“風だったり、陽の当て方だったり、季節によっても違うし、鶏舎に入っている雄と雌の量によってもやり方を変えています”

その時々の条件によってやり方を変える。
これまでに蓄積された経験と知識がそれを可能にさせる。
また、堀江さんは直接料理人と意見交換することを大事にしている。
それは生産者として生産者本位で作ること、自己満足になることを抑止するためだという。

“完璧はないんです。同じように飼っても、全く違う鶏になるんです。生き物を扱うってそういうことです”

numazu-journal

堀江さんのこだわりは餌にも及ぶ。天城の特産であるわさび、その葉っぱを餌に混ぜる。
わさびには抗菌や整腸作用があるそうだ。わさび以外にも近所の豆腐屋さんでできる豆乳も与えている。
人間が飲めるほどの豆乳を惜しげもなく与える。

numazu-journal5

これほどまでに手間暇かけて飼育された天城軍鶏だが、実際に食べる機会というのは少ない。
また、その食べ方もよく分からなかったりする。

“そうなんですよ。食べ方が分からないとただ硬いで終わってしまうんです。だから、プロの料理人さんを経由して消費者に届くようにしているんです”

11月9日、10日に御用邸で行われる松間の饗宴でも天城軍鶏を味わうことができる。
調理に腕を振るうのは沼津リバーサイドホテルの日本料理かの川と馬込のフレンチレストランSHORE。
天城の自然の中で育った天城軍鶏がどう調理されるか、興味は尽きない。

numazu-journal3

堀江養鶏
電話:0558-87-0644
http://www.amagi-shamo.jp/

ベアードビール × 高嶋酒造 トークライブ

先日、Lot.nコミュニティスペースで沼津を拠点とするベアードビールのベアードブライアンさんと白隠正宗をつくる高嶋酒造の高嶋さんのトークライブが行われた。
沼津ラガーや白隠正宗を飲みながらの会。

IMG_0618

オイルサバディ、黒はんぺん、各種調味料など
ロットンで扱う食品もおつまみとして。

IMG_0620

世界から注目をされるベアードビール。
若手の杜氏として全国から注目される蔵元の高嶋酒造。
実はお二人のトークライブははじめて。
このトークを聞こうと、仕事帰りに東京からやってきた方もいた。

IMG_0632

お二人に今まで、そしてこれからを語って頂いた。

ベアードさんは13年前にビールづくりをはじめた。
沼津港のそばのビルの2階。
そこは日本一小さなビール工場だった。
大手ビールメーカーのつくるキレのいいビールではなくバランスのとれた個性のあるビール。
そんなビールは初め、全く沼津の人に興味を持ってもらえなかった。

IMG_0642

高嶋さんは、東京農大で醸造学を学ばれご実家に戻られる。
ご実家の酒蔵に入ると、今までのつくり方や意識に疑問を持ち始める。
しばらくすると酒造りを見直そうと29歳という若さで杜氏になり根本から酒造りを変えっていった。
でも沼津ではなかなか評価されない現実。

お二人がつくったお酒は沼津ではなく東京など県外の人たちから注目をされていく。

しかしお二人は地元をしっかりとみつめていた。
地酒、地ビールは
“地元の人でつくり、地元の素材でつくり、地元の食にあうようでならない”

IMG_0685

富士山からの湧水を使い
地元の農産物を使い個性的な味わいを出していく。
地元の生産者のお米を多く使い、醸造アルコールを使わなくなっていく。

生産者に工場から出たホップを堆肥として畑で使ってもらう。
精米して出されるモノを堆肥にし稲作りに使ってもらう。

農を活かし農に還元するお二人の取り組み。

地域にこだわるのは
『循環』
という言葉に共通点があった。

49jQMN1LEY1ZCw5yy4AZkl5FKDnl7RQoY9Loe82dNN0[1]

以前、沼津西浦地区で自然農のパイオニアの高橋さんの畑へベアードさんと一緒に行った時のこと
カルフォニア出身で歴史学者のお父様を持つブライアンさんは、
物事の本質に向き合い、そして本物をつくる『職人』を気質を持つ日本のモノづくりの人々、
そして生産者を尊敬していたことを思い出した。

IMG_0711

そしてお二人は世界も見つめたいた。
世界的なクラフトビールの市場の広がりを実感しているベアードビールは規模を拡大しより農に近い場所、修善寺で新しい工場が稼働する。
高嶋酒造は世界的な日本食の広がり、日本酒の味覚そして知識の成熟していく事を見越し、純米酒だけをつくり続けていく。

IMG_0743

理念に向かっていくことは、とても大変なことだ。
途中で挫折してしまう方も多いが
強い理念を持ち行動し続けることで、まわりに共感者が多くなっていき、その理念により近づいていっているような印象を受けた。

“想い”からすべてがはじまる。

IMG_0789

今回はシェフ、酒屋さん、干物屋さん、わさび漬け屋さん、行政の方などにもご参加して頂いた。
それぞれが地域をベースにした想いの強い方たちだった。

これからこの想いがカタチになっていくことが楽しみだ。

IMG_0797

Lot.nのコミュニティスペースでは、このような想いを体感できるワークショップやトークライブを行う予定だ。

ぜひとも参加して頂き、この地域のヒト・モノを体感して頂きたい。
ビールを片手に。

IMG_0786

御用邸の宴

本日から沼津御用邸記念公園で松籟の宴が始まり様々なプログラムが16日間行われる。
11月9日、10日には庭園で松間の饗宴(まつまのきょうえん)を開催。

波音を聞きながら松の間から通り抜ける風を感じ
沼津近郊の秋の恵みを料理人が一皿に想いを込めて提供。
秋のめぐみを味わうひとときを愉しめる。
matshuma

この宴の料理は、予め料理人に使用する食材が決められた。

沼津魚市場の水産物/ 大中寺芋/ 西浦の柑橘/ 愛鷹山麓野菜
石塚豚/ 天城軍鶏/ 丹那牛乳/ ごとうのたまご /

生産者と料理人のコラボレーション。


web2

【1日目】
■かの川・・和食  大中寺芋と天城軍鶏の煮しめ
■SHORE ・・フレンチ  ・西浦みかんと海老と天城軍鶏のソテ 
■サンテラスキッチン ・・イタリアン  トロール漁の駿河湾パスタ 
■麦豚工房石塚 ×REFS ・・ハムソーセージと野菜のプレ-ト

《アミューズ》
OPERA 魚ぶん イルパリオ Loutus Sweets ふじやまプロシュート

【2日目】
■かの川・・・和食  大中寺芋と天城軍鶏の煮しめ
■aiai ・・・フレンチ 沼津 西浦みかんのガレット
■一歩 ・・・中華  沼津鯖と野菜のあんかけご飯 
■麦豚工房石塚 ×REFS ・・ソーセージと野菜のグリルプレ-ト

《アミューズ》
山正 Ninoe Toq`s Wild Oven ふじやまプロシュート

沼津の地ビール ベアードビール 沼津の地ビール 白隠正宗も用意される予定だ。

当日、11時からチケットが販売される。
1チケット 約300円となり、1~3枚のチケットと料理を引き換えとなる。
限定300皿。

ぜひとも、農産物、水産物、畜産物を食し旬を感じながら
沼津の魅力を存分に味わって頂きたい。

kanogawa

沼津御用邸記念公園 本邸奥庭
雨天時:東附属邸
11月9日(土) 11月10日(日)
12:00~15:30

御用邸入場券 100円

お問い合わせ:松籟の宴実行委員会
(沼津市観光交流課内)
055-934-4747

御用邸と大中寺芋のつながり

numazu-journal2

10月の終わり、中沢田の畑で大中寺芋の収穫が行われた。
大中寺芋とはこの地域で収穫された里芋につけられた名前である。
特徴は赤ん坊の頭ほどになるというその大きさ。
普段我々が食する里芋は子供の芋もしくは孫芋。それに対して大中寺芋は親芋だという。
その味は不思議なほど、きめ細やかでまったりとした味である。

“煮物にして食べるのが一番シンプルでいいね。家庭で普通に食べられてきたんで今まで残ってきたんです”

答えていただいたのは生産者のひとり、井出栄一さん。
実は井出さんのお父様である井出貞一さんこそがこの大中寺芋の種芋を絶やさずに作り続けたのだ。
現在はご子息である栄一さんが大中寺芋の会を結成し守り続けている。

numazu-journal3

では、なぜ大中寺芋という名前がついたのか。
名前の元となった大中寺は臨済宗妙心寺派の禅寺。
明治31年、大正天皇が愛鷹山への狩猟の道すがら大中寺へ立ち寄られたことをきっかけに大中寺はしばしば皇室のお成りを仰ぐことになった。
大中寺ではその都度、名産の里芋を用意し、お土産としても用いたそうだ。
また、警備の警察官に煮て振る舞ったとも伝えられている。
こうして御用邸では大中寺の里芋ということで、いつしか大中寺芋と呼ばれるようになった。

numazu-journal4

“お歳暮になると70軒ぐらい大中寺芋を配るんです。そういったことが積み重なって今日があるんですよ”

大中寺の住職、下山光悦さんはそう語る。
生産者と消費者、立場は違えども地道な努力が大中寺芋の普及に繋がる。
地域の伝統的な食を地域で守る、シンプルだけど大切なものがここには残っている。

そんな沼津の食を存分に味わう機会が11月9日、10日と御用邸で行われる“松間の饗宴”である。
大中寺芋も沼津を代表する食材として料理人の手によって調理される。
それは御用邸と大中寺との関わり、歴史を感じさせてくれるものになるに違いない。

numazu-journal

生き続ける味噌

watanabe02

昔、農家ではどの家でも自家用味噌をつくっていた。
手間のかかる味噌作り。
時代とともに味噌を作る家は少なくなっていった。

味噌や醤油、金山寺味噌の製造販売をする三島の渡辺商店の渡辺勝利さんと奥さんのきみ江さん。
“ただ昔からの味をまもっているだけです”
お父さんに教えてもらった味を守って今も味噌を作っている。

もともとお父さんの代から続く米などの農家だった。
近所の人にたのまれ農家の傍ら醤油やみそをつくっていた。
勝利さんの代になって45年。

お母さんが嫁にきてから二人きりでお父さんの味を守っている。
あくまでも“二人でできる範囲”
だから手作業で丁寧に作っている。
防腐剤も化学調味料をつかっていない。

渡辺商店では自家製の麹も作っている。

watanabe03

時間もかかる。
でも守り続けるべきものがある。
その思いはとてもシンプルなもの。
“やってきたからこれからもやっていく”

watanabe04

化学調味料などがなかった時代から味噌を作っていた。
時代の移り変わりとともに防腐剤などが使われるようになった。
だが使うとなんだかうまくいかなかった。

現代の流れに合わせて食の講演会など勉強も怠らない。
化学調味料などを使わなくても、素材の味、そしてお父さんの味を守れるように。

手のかかった味噌は、
味もにおいも一辺倒ではない複雑な風味。
とてもふくよかな味。
香りが良く、それは生きているにおい。

watanabe03

あるとき、昔から渡辺味噌を愛用しているおじいさんが
カビが生えた!と喜んで連絡してきたそう。
無添加の味噌にはカビが生える。

カビが生えないように防腐剤をいれて菌を殺してしまうのではなく
味噌をちゃんと生きたまま届ける。

何もかもがきれいに、人間が発酵や細菌とともに作り出してきたものも殺してしまうのではなく、
ちゃんと共存するという意思がそこには見れるような気がする。

“手だけはほめられるの。どんな化粧品つかってるの?って”
とおちゃめに答えるお母さん。
酵母菌に囲まれたお二人は本当に元気。
ふたりともよくしゃべり、肌がつやつや。

watanabe05

古き良きものをちゃんと知ってて、それを守り続ける。
めんどくさいことをめどくさいままやっている。
一見頑固なようだが、その頑固さが信頼できる。

“この味噌はうちのじゃないんだ、味噌をあずかってるんだよ”と。
自分で作った味噌の仕上げをしたり、材料だけを持ち込んで味噌をつくることも引き受けているそう。

気持ちのいい感じ。
人も味噌も生きていることを十分に感じているからこそできること。
最後に一番おいしい味噌の使い方は?と聞くと
“やっぱり味噌汁だね!”
そう笑顔で答える勝利さん。
あったかなお味噌汁が飲みたくなった。

≪渡辺商店≫
〒411-0035 三島市大宮町2-6-26
TEL:055-971-6370

庭マルシェ

黄瀬川のほとりの住宅街にたたずむweekend books。
古本を置くこのお店では現在、庭マルシェ〜五つの庭をめぐる旅 〜が行われている。

IMG_1926

扉を開けると、晩秋の晴れた日の庭を思い出すゆったりとした時間が流れていた。
まず目の前に現れたのはガーデンデザイナー 高橋さゆりさんがつくられた世界。
IMG_1898

本を読みながら紅茶を飲み焼き菓子を食べたくなる。

高橋さゆりさんは伊豆の国市在住で、本年度 西武ドームで行われた国際バラとガーデニングショー奨励賞を受賞されたりと全国でも活躍される。

IMG_1884

他にもガーデンプロデューサー 空間工房 鈴 の鈴木さん、造園家 晴照造園の大矢健晴さん、花屋のgivernyさん、造形作家のheck.haruさんなどの作品や空間によって五つの庭の世界がつくりだされる。

IMG_1893

展示室をくぐるとgiverny(ジヴェルニー)さんの表現する庭の中に。
その空間はカナダの森を思い出した。

ちょうどジヴェルニーの三保さんが落ち葉をまいてメンテナンスをしていた。
IMG_1892

この空間は落ち葉、流木など死んでしまった生き物と生きている植物を混合して作品をつくったそうだ。
「生」と「死」がまわっている世界。
生きていることの「今」を感じられる。

こうやって踏んで落ち葉から出る音を楽しんで、この空間を感じてほしい。
と楽しみ方を笑顔で教えてくれた。
IMG_1875

懐かしい異国の森を連想させたが、使われている物は身近にあるもの、海で拾った木だったり山からの落ち葉だったり、そして家の倉庫にあったものも。
三保さんのひいおじいさんは庭師っだったそうで、かつて使われていた道具も存在感を持ってそして自然な感じに飾られていた。

IMG_1901

とても秋らしい、そして懐かしさを感じるこれらの空間、そして全体の雰囲気は写真ではなく、ぜひとも足を運んで感じて頂きたい。

IMG_1905

「ずっとここにいたいね」
お客さんがそう話していた。
心地のいい空間の余韻を自宅に持っていくために今の気持ちで本を選ぶ。
旅の本、庭の本、料理の本・・・

IMG_1906

店主の高松さんは昨年12月にこの企画をしたいと思い、半年前から準備をすすめていった。
映像や本に出てくる素敵なお庭の空間を、本のあるこの空間で再現したかったそうだ。

IMG_1924

本は雑貨の物語、食の物語、素敵な庭や景色をきりとったもの。
こうして、本のような素敵なモノをきりとった空間を楽しんで頂き、本にももっと親しみをもってほしいと、やさしく語られた。

この企画は10月28日まで行われている。
次の企画は11月24日から ヨーロッパの古いものがあつまる“古ものマルシェ”が行われる。

weekendbooksは本の世界をまた新しい形でライフスタイルに提案してくれる。
IMG_1900

庭マルシェ 〜五つの庭をめぐる旅 〜
10月25日(金)〜28日(月)
10時〜16時

weekendbooks
古本・CD・雑貨・焼き菓子  
〒410-0022 静岡県沼津市大岡509-1 
055-951-4102 10:00~16:00 
水 木曜定休 
http://www.weekendbooks.jp/

竹が表現する世界

沼津ならではの「食」、「歴史」、「文化」といった資源を活用した松籟の宴(しょうらいのうたげ)が今年も開催される。

竹のインスタレーションが御用邸の庭園を彩る。
長年続く、草月流による沼津御用邸での竹のインスタレーション。

そもそも始まったのは以前、草月流の家元 勅使河原茜さんが
御用邸をとても気に入って、ここで竹のインスタレーションをと提案した。
草月は“竹”を使うことを得意としており、
沼津も伝統的な沼津垣があったりと竹にはなじみが深い。
ということで始まったこの共演。
今年も松籟の宴でコラボレーションする。

10月18日から東京や静岡から草月流の方々が集まり約280本の竹を使用した製作が始まった。

竹は次々と形を変え、命が宿る。

i00630

1つのインスタレーションに10人くらいのスタッフが力を合わせて形作っていく。
その姿はいけばなを行けるイメージとはかけ離れ、
脚立や電動ドリルなどを使い、
竹の力強さに負けないように、まるで家を建てるように作られていった。

i00638

細く竹を割いたり、
丸くしたり、
幾重にもかさねたり。

IMG_0495

まっすぐに伸びる竹にこんなにもいろんな表情があるのかと驚く。

男性チームも洗練された技術を駆使し作り上げていった。

i00654

よりまっすぐに、勇ましく。
矢来をモチーフにした竹のトンネル。
角度をつけ、高低差がついた竹のトンネルを作ることは難しい。

IMG_0481

この竹のトンネル抜けると各チームが力を合わせて作った竹のインスタレーションが並ぶ。

御用邸を守るため海風を耐え、斜めにはえる松の木とまっすぐ伸びる竹が一緒に背景を作り出す。

草月のいけばなは「型」にとらわれることなく、常に新しく、自由にその人の個性を映し出す。
いけ手の自由な思いを花に託して、自分らしく、のびやかに花をいけていくことを大切にしている。

伝統と技術と自由。
そして“自分らしく”
それはどこか沼津と似ている。

今回もそうだ。
伝統ある御用邸で沼津ならではの新しいプログラムが行わる。

松間の饗宴

11月9日(土)10日(日)にアートの中で食事会も行われる松間の饗宴

御用邸の松林の庭と竹のモダンなアートの共演、
食材と沼津のシェフたちとの共演。

刻まれた歴史、貴重なものたちの中に
新しい時代のエッセンスが加わる。

いつもとはまた違う世界を楽しんでもらいたい。

この草月流の“竹のインスタレーションアート展”は
11月2日(土)~17日(日)9:00~16:30
に御用邸園内で行われる。

沼津市制施行90周年記念事業 沼津御用邸記念公園 松籟の宴 2013
→くわしくは■こちら

センターテーブルを作るということ

numazu-journal

“僕が作ったのは沼津の素材を使って地元に誇りを持ってもらうようなものだったと思うので、ちょっとでもお客様に伝わっていればいいかなと思いましたね”

レストランSHOREのオーナーシェフ、鵜澤宏至さんは沼津自慢フェスタを振り返る。
鵜澤さんが参加したのは開催最終日のセンターテーブル。
和食の美食倶楽部 蓮、ワインバーレストランのNinoeとのコラボレーションだ。

numazu-journal2

“海に敬意を持ってもらうような味にしたく、ソースも塩を使わず貝の持っている塩味で作りました。きれいな海というのはそれだけでありがたいものだということをお皿の上で伝えたかったんです”

食材に対する姿勢、感謝の気持ち、敬意を大切にする鵜澤さんらしい言葉である。
そんな自慢フェスタのなか我々が気になった点がひとつある。
それは鵜澤さんを終始サポートしていた奥様が流した涙である。そのわけを訊いた。

numazu-journal3

“みんな純粋で、ほんとにいい子たちで。清らかな心に触れたというところです”

自慢フェスタの3日間をサービスボランティアとして支えた飛龍高校の生徒。

その生徒たちの一生懸命な姿を見て心を打たれたということだ。

センターテーブルを作ったのは料理人だけではない。多くのサポートがあり、あの特別な空間、空気感が生まれたのだ。

“一生懸命学ぼうとする姿というのは見ていて感動的ですよね”

多くの人の想いのうえに成立したセンターテーブル。
自慢フェスタ初参加となった鵜澤さんはそこで普段とは違った充実感を得た。

“いつもと違ったものにチャレンジする機会を与えて頂いたのはありがたいですよね。久々に完全徹夜でしたけどね(笑)”

numazu-journal4

RESTAURANT SHORE
静岡県沼津市馬込31-1
電話:055-960-7714
http://www.uzawa-french.com/