沼津には高嶋酒造という約200年間続く酒蔵がある。
“白隠正宗“という純米酒のみを製造する地元に根ざした酒蔵だ。
高嶋酒造の代表取締役で杜氏の高嶋一孝さんにをお話を伺った。
高嶋さんは今から14年前に25歳で社長になり、その2年後の2007年、杜氏も務めることになった。
約5年前も沼津ジャーナルは取材をしていた。
(その当時の記事 → 時代を見極める酒)
前回の取材の時期は高嶋酒造にとって転機で、純米酒だけを作ることを決めた頃だった。
「この5年でよりエッジが効いてきたなあと思います。」
今、取り組んでいるのは、地域の農に寄り添った酒造り。
それは酒造りのために精米したぬかを、発酵させて田んぼに戻す。
その田んぼで出来たお米を原料にまた酒を作る。
捨てるとこなく、足すこともない、完全な循環型の酒造りだ。
まだまだ難しいところはあるが、伊豆の生産者と一緒に試行錯誤しながら進めている。
「“原材料をいかにシンプルにしていくか“というトライアルを続け、5年前に純米酒だけに切り替えたのもその第一歩。本当に大きな一歩でした。」
一般的に酒造りにはアルコールを添加する方法がとられている。
添加物を使用している場合が多いが、高嶋酒造では全く使わない。
米と水だけで酒をつくるような、まさしくとことんシンプルでピュアな酒造りが行なわれている。
さらにこの春からは新たな取り組みが始まった。
甘酒作りだ。
静岡県産米と、酒蔵から湧き出る富士山の伏流水だけで、白隠正宗の吟醸造りを応用し、菌糸が蒸し米の表面を覆わず、中心に深く食い込む突破精麹(つきはぜこうじ)を使う珍しい製法で作られる。
ピュアな酒造りに行き着いたきっかけを聞いてみると意外な答えが返ってきた。
「いろいろあるんですけど一つは、いつもお酒を飲んだ後 一人で瓶ビールを飲みます。その時に一瓶飲み干す時とそうじゃない時があって。なんでだろう?って思ったのがきっかけでした。」
その時の酔い加減や体調かと思ったが、それがそうでもなく、あるときラベルを見ると、飲める日と飲めない日の銘柄が違ったと言う。
飲めない日はコンスターチなどの副原料が入っており、飲める日は麦芽とホップだけのモルトビールだった。
純粋にモルトビールを好んで飲んでいたことに気付いたという。
それをきっかけに何でドイツの純水法があるのかというのを改めて自分なりに考えを巡っていくと、
本来日本酒も純米酒だけだったんだから、そうあるべきだと思い実行に移した。
また現在は様々な製法があり、綺麗に作ろうと思えばいくらでも出来るという。
例えば、精製された酵素を入れて作るところもあれば、出来上がった酒の味わいが濃ければ彫刻のように削り取ってスッキリさせることも出来る。
しかしそれに魅力は感じない。
「僕らが丁寧につくって綺麗な味わいにするというのは当然なんだけど、綺麗すぎるというか、自分たちが作ったノイズを感じてもらいたいなというのがある。
それは雑に作るという意味ではなくて、余計なものを使わずして綺麗でおいしい物をつくるのが大事なのではないかな。
一緒に働く人にはそういう想いで酒造りに携わってもらっています。」
純米酒にたどり着いたきっかけは意外にも、お酒の中でもビールという違うジャンルからの気付きだった。
「常に知識の蓄積、それが無駄なのかもしれないけど、無駄じゃないなと
インプットとアウトプットがあって、インプットはなんでも蓄積。
酒はもちろん、酒より遠いところもインプットした方がいいと思う。
そして酒だったり甘酒だったり製品すべてが僕らのアウトプットだから、
インプットをしないと意味がないというか、当たり前を当たり前だと思って、当たり前にやっちゃう人間になると思う。」
“自分たちのノイズ”それはお酒に作り手がちゃんと感じられる、作り手自身が自分らしさを持っていることではないかと感じた。
高嶋酒造のスタッフで趣味人じゃない人はいないという。
カメラ好き、バイク好き、車好き、そして酒が好きだという人も。
高嶋さん自身も好きな物はところんやるという。学生の頃から音楽をしていたり、落語もここ10年くらい聞いているといい、
趣味と呼ぶにはもったいないくらい、好きな物にはとことんのめり込み掘り下げ自然と身になっていき、
それはもうライフワークとなっている。この日も「演目を色々知っておくと、人生の役に立つなあって。」と落語についてワクワクとお話される姿が印象的だった。
趣味について蔵人兼デザイン担当の植松さんと話す高嶋さん。
「一緒に働きたい人は、ある意味趣味人というか、仕事以外にも何か楽しみを持ってる人がいいなと思いますね。」
トレンドを追わず、高嶋酒造ならではのピュアな酒。
ものづくりが中心で、それが社会や地域に還元できるかということ。
今の流行ではなく、本質的な地酒で、なおかつコミュニケーションツールとして最良のものをつくっていくということを一番意識しているという。
それは5年前と変らない。
「流行に合わせた酒を作ってもっとスタッフにいい想いをさせることもできるんだけど、そうするとつまんないものになるし、結局やっぱり、1、2年のスパンでものを考えたくない。10年、20年、もしくは100年後のことを考えていきたいですね。」
と高嶋さんは言う。
経営者であり杜氏であるからこそ、そして趣味人だからこそ言えることではないだろうか。
現在高嶋酒造では社員、パートタイマーを募集中。
酒造りは冬場の期間 半年ほど、それ以外では甘酒やミネラルウォーターの製造からイベントの出店補助までが業務となる。
酒造りとなると力仕事も多いので男性のみというイメージがあるが、男女は問わない。
朝食は作業後に仲良くみんなで頂きます、社長特製カレーの日も。
平均年齢は40代。
30代も3名いるという高嶋酒造。パートを含むと女性も多く働く職場だ。
高嶋さんも言うように、好きなことを持って、さらにそれを酒造りに活かす、男女も立場も関係なくものづくりに携わることができる。
我こそはという方は是非、高嶋酒造の門を叩いてみてほしい。
高嶋酒造株式会社
代表者名 |
高嶋一孝 |
職種 |
製造業・製造補助 |
雇用形態 |
正社員(試用期間あり)・パート・アルバイト |
給与 |
20万円〜/パート・アルバイト時給820円 |
福利厚生 |
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険完備 |
仕事内容 |
酒造り、その他事務・配送作業など |
勤務地 |
静岡県沼津市市原354−1 |
勤務時間 |
相談 |
休日休暇 |
年間105日(製造はGW10連休、夏季10連休あり) |
HP |
http://www.hakuinmasamune.com/index.html |
お問い合わせ |
TEL:055-966-0018 担当:植松 |