この土地を大切に、そして革新を〜NORA/今井風多さん〜

東京から家族で西浦に移住をし、古民家でNORAというカフェを営む今井風多さん。
この春には3人目のお子さんが西浦で生まれた。

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今井さん一家が以前住んでいたのは東京の谷中。
都心の真ん中でありながら人のつながりも大切にし、独自の雰囲気を持つ下町だ。

中学高校時代は自由の森学園という自主性を大切にした学校へ入学した。

テストは無く体育祭や修学旅行もやるかやらないかさえ自分たちで決めるという。
今井さんも修学旅行に環境問題をテーマにドイツへの旅を企画してホームステイ形式で滞在をすることになった。
「そしたらそれがすごい面白かったのね。そのときに、色々、中高でやらせてもらったから結構主体的っていうか。
言われてやるよりかはやりたいっていうか自分で。その方が強くなって。」
そのころの経験が今に至る。

今井さんは25歳からお茶の水の自然食品店で働き、1年足らずで店長になった。

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都会のど真ん中で自然食を売ること。
「泥つきの大根や人参を売ってるっていうことが、なんか綺麗なものを買うような世界観溢れるエリアのなかで、そこにとてもメッセージあるなって思ってました。」

今井さんは都心でも自然に寄り添うライフスタイルを大切にしていた。

谷中の生活は気の合う仲間たちがいて、長女が生まれた時も“怪我と弁当自分持ち”とスローガンを掲げ自主保育を始めるほど。
仕事場も住居地も満足いく“移住”なんて必要ない環境の中だ。
それでも移住したきっかけになったのは東日本大震災だった。
当時、職場の目の前の大きなビルが揺れ、都会の機能は麻痺。
さらに放射能の問題もあり数日間子どもたちは外で遊ぶことも出来なくなった。
お店でも野菜等の流通の打撃を目の当たりにすることとなる。

「このままここにいてよいのだろうか?」

谷中の仲間たちもまた同様にして考えて、全国各地へ移住していった。
今井さんはたまたま勤め先の創立者の家が西浦にあり今住み手がいないので住まないかというオファーを受けてとりあえず行こうと即決したそう。
仕事柄、色々な地域の生産者を取材し、冊子をつくっていたので西浦のことも知っていたので不安は無かったそう。

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そして今は地域に根付き内浦地区の古民家でカフェをスタートすることになった。

最近“移住”も一つのライフスタイルとして定着しつつあるが、
やはり気になるのはどうやってその地域に入り込んでいくかということだ。
村である“西浦”にも自然に入り込んでいるように見えた今井さん一家だが、
もちろん最初から、そして今も簡単に好き勝手に暮らしている訳ではない。
引っ越してくる時は村の総会で挨拶をし、村役や消防団、PTA役員、主婦の会なども引受けた。
すぐに入ることになった消防団では神楽にも挑戦。
縦社会のない生活を送ってきた今井さんにとっては大変なことも多かった。
しかし、そこで鼻から出来ないと、やらないのではなく、まずそこにあるものを理解しようとする。
そして自分の出来る範囲でよりよくしていく努力をした。

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神楽は伝承が難しくなっていき、観客も少ない状況にある。良い伝統を残していくために記録ビデオを残すことにした。
知人のカメラマンに声をかけドキュメンタリーとして1年をかけて撮影をしているそうだ。
村の人たちも新しい感性が入ることは面白がってくれているという。
また、西浦は一度東京に出た人も子育てにはと戻ってくる人も多いそう。
海と山がある自然豊かな地域に色々な感性が集まることでまた文化が出来てくる気がした。

「静岡東部はすごい面白くなっていくと思っている。この辺りもそうだし、中伊豆とかも。
長野や山梨では移住者が増えてコミュニティが出来上がっているけど、ここら辺はまだできてないから自由。可能性があるなと思う。」
東京から車で2時間県内の自然豊かな地域のポテンシャルは高い。

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NORAをやることになったのは知人の古民家を引き継ぐことになったからで、
飲食店をやるのはなんと初めて。
心地よい空気が流れる店内も大半をDIYしたそう。

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本当に今井さんの行動力には驚かされる。とりあえず移住してみて、
いい流れをキャッチしながら進む生活には子どもたちの存在も欠かせない。
子どもたちがいることで地域にも馴染みやすいという。
全校生徒約60人の小学校はみんな仲が良いそう。

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「今後?やってみたいのは地域のハローワーク。ミカンのシーズンにここ人で足りてませんとか。
結構あると思うんだよね。ゲストハウスも計画してるよ!」

というのも今井さんの得意分野は“人と人をつなぐこと”実際に移住してきたカップルがNORAを訪ねて話している中で、話に出た知人のお店で働くことも。

「ここへ来て友達が増えたから、地域に根ざしたこういう人紹介できるよとかってのは簡単にできちゃう。
電気屋さん、水道屋さん、大工さん… いろいろな友達がいるし、他にもいろんなことやってる友達がいっぱいいる。
地方にも東京ほど人数がいるわけではないけれど面白い人たちはいっぱいいるし、
その中で合う合わないは自分で選んでけばいいでしょ。」

都会ではたくさんの人がいてすぐ人に会える。田舎にはそれが少なく距離感も近い。
だからこそ、出会った人たち結構重要だ。その土地に根付けばずっと続いていくこととなる。

「それってすごいことだと思う。濃さがね。たくさん面白い人がいて、たくさん会えて、
その中から人を選んでいくより、出会ったらその人をつかまえて、一緒にずっとやってくとか、楽しいなとか思ってるけどね。
あとは、ごちゃまぜにしたいですね、沼津とか東京とか関係なく。」

少し億劫に感じてしまいそうな人間関係もこんな風に考えれば楽しそうだ。
面白いことが西浦から起こるかも、そんなことを予感させる今井さん。
じっくりと土地に根付くおもしろさを感じた。

NORA:
静岡県沼津市内浦長浜121
tel: 055-919-0684
https://www.facebook.com/nora831/?fref=ts