1月のスペシャルトークライブはなんと人気山雑誌、ランドネ編集長と私たちの暮らしを守る国土交通省沼津河川国道事務所所長の対談だった。
「山と川の魅力を知ろう!地域がもっと楽しくなる」
普段、お二人に会う機会もめったにないだろうし、このお二人が対談することもなかなかないだろう。
約30名の方に参加して頂いた。
狩野川活用研究会メンバーの沼津ジャーナル編集長、小松がナビゲーターとなり、3人の知識や経験をもとに参加した全員で地域をもっと楽しむための話で盛り上がった。
そして、今回は立場をあまり意識せずお話しして頂く事に。
なのでもちろん呼び方も編集長や所長ではなく、「●●さん」とさせて頂いた。
【お二人のこと】
はじめにお二人のバックグラウンドを簡単に説明して頂いた。
千葉県出身の大儀さんは学生時代に山岳サイクリング部に入っていた。
奥多摩などマウンテンバイクを担いで山に登っては下りる。
長期の休みは自転車に乗って旅するサークルで地方を回った。
その時、様々な道や川を見て
“国造り”に興味を持ち、そして建設省に入省した。
一方、対照的なのが佐々木さん。沼津の隣、清水町出身。
中学時代は朗読部。文系を地で行くような学生で、文学が好きで出版社に入った。
フランスに取材に行った時、平日はバリバリ働いている女性が週末全然違う格好で登山に行く姿を見て、素敵だと思いそのことを社内で話したところ、ランドネの立ち上げを受ける事になってしまったそう。
ランドネという山雑誌は、これから山を始めたい方、始めてから3年目の方が楽しむ情報を発信している。
山での過ごし方をおしゃれに提案しており、今まで山に興味がなかった人にも楽しめる内容。
だがはじめは従来登山をしている人たちに山でスカートを履くなんて!などお叱りを受けたことも。
アウトドアは厳しい歴史のある世界。
言わんとすることはもっともだ。
愉しむのは安全の上に成り立っている。
ランドネは山以外の部分ファッションにもちゃんと光を当てており、本当に山を楽しみたい、始めたい、そういう人に支えられた。
だからこそ安全面をちゃんと伝えるようにしているそう。
また、驚いたことにランドネでは“山ガール”という言葉は使っていない。
一人歩きした言葉はやがて消費されてしまう、ブームにしたくないという思いがある。
ランドネの本来の目的である登山が盛り上がってほしいということを大切にしている証拠だ。
【この地域の山のこと、川のこと】
佐々木さんは“沼津アルプス”に対して“ミニアルプス界のスター”だとおっしゃった。
都内からも、駅からも近く、海、そして富士山を眺めることが出来る。
さらには、麓に沼津港などおいしいもの沢山ある。
参加者のある方が経験談を話してくれた。
沼津アルプスに行き、おばあさんに会いお話をすると、その方は名古屋から新幹線で来ていた。
地元の人間にとっては身近な山“なんでこんなところにそんなわざわざ?!“と思ったそう。
車のないおばあさんにとって駅の近くで富士山と海が見える沼津アルプスは大切な山だそう。
だからこそ地元の人には大切にしてほしいと言われた。
身近すぎて気づかない裏山にはだれもが羨む素敵な要素がいっぱいなのだ。
他県から来たからこそ分かること、それは大儀さんもだ。
全国各地、いろいろなところで業務をしてきた。沼津の前は長崎だったそう。
沼津に来て、沼津アルプスはもちろんのこと狩野川の良さにも感動した。
山と川が近く、上流から脈々ときれいな水が流れており、こんなにもきれいな一級河川は全国でも稀。
だが、川には“近づくな危険”の看板。
大儀さんと同じ機関が建てた物だが、とてももったいない事だと感じたそう。
参加者の方から意見を聞くと、昔の狩野川を知る人もおり、原体験として狩野川で遊んだり、高校の部活でボート部のため狩野川が青春時代の生活の一部だったり、様々な思い出を思い出を持っていた。
果たして、今の子供たちは?
昔の思い出も語れなくなってしまうとまったくそこは意味のない場所になってしまう。
子供にも川が楽しいと伝えていくことが、10年,20年後も地域の魅力にもつながるのではないだろうか。
楽しさを知るには、川の危険を知らなくてはならない。
だが川に触れなければ危険はわからない。
【現在の取り組みのこと、これからのこと】
昨年から川に関わる取り組みが大きく始まった。
大儀さんは子供たちに川に親しんでもらうきっかけを作ろうと思い、沼津河川国道事務所では狩野川で生物調査やカヤックに乗るなどのイベントを行う狩野川わくわくクラブを始めた。
沼津市、国交省、商工会議所、そしてあげつち商店街で狩野川活用研究会を立ち上げ、来年度は協議会となる。
昨年から社会実験事業として、試験的に河川敷でリバーサイドカフェ、水辺のステージ、オープンテラス、BBQを行い、Lot.nでは体験カヤックを行った。
イベントだけでなく、日常にどう返していくか。
イベントは入口、そこから日常に戻す出口をちゃんと作っていくことが大事だ。
大儀さんから“長崎さるく”という取組について紹介があった。
長崎の良さを味わうのは、まちを歩くのが一番。そのために観光地から路地裏までを街の皆で紹介するような取り組みだ。
まず、自分たちの地域の良さを知ること。
川のある街の魅力を地元目線の地図にしていこうという提案も。
ランドネは、山登り初心者の方にもきっかけという入口を作り、さらにはもっとファンになってもらうためランドネ山大学などコミュニティーを作り出す。
佐々木さんからその真意を伺った。
入口の作り方は雑誌の強みである写真の力、ビジュアルが重要だそうだ。
さらにイベントを使いキャッチー面を見せつつも実際そこで楽しんでいる人がいることを伝えていく。
実際これだけの力が集まっているんだっていう事を示すのも大事な事のようだ。
そんな話の中で面白い提案が佐々木さんから挙がった。
それは“全国ミニアルプスサミット”を沼津アルプスのある沼津でやること。
狩野川で前夜祭として川遊びや地元の食材を集めたり、水辺のステージをやってみたり。
そして次の日はみんなで沼津アルプスにチャレンジをするという、想像しただけでもわくわくする企画だ。
最後にお二人の未来を伺った。
大儀さんはこれからも狩野川をはじめ川や道路を通じて地元をより魅力的にするために、行政として、そして皆さんと一緒に頑張っていきたいそう。
佐々木さんはランドネで今後もやってきいたい事は“山だけでなく、山周辺にある文化など総合的に楽しむことをもっと発信していきたい”とのことだ。
トークライブでの3人の意見交換、そして参加者のみなさんの経験の発表やご意見は川のある生活の面白さ、山から海へと狩野川がつなぐ静岡東部の自然の多様性を改めて知り、この地域がさらに面白くなる可能性があることを共有する時間となった。