
“とにかく体験していただきたい”
そう語るのは御用邸やびゅうおなどを無料でガイドしている
ぬまづ観光ボランティアガイドの会長、笠井幸子さん。
この日、伊豆半島と香貫山の生い立ちを学びながら、
駿河湾に沈む夕日を眺めるといった趣向で香貫山夕暮れウォークが行われた。
市民文化センターを出発し芝住展望台を目指すのは総勢80名。
リュックさえ持たない身軽さが香貫山の魅力でもある。

標高は193m、伊豆半島の付け根、静浦山地の最北端に位置し、
登山愛好会が命名した沼津アルプスという名称も定着している。
市民文化センターから歩いて15分もかからないうちに、周囲は自然に囲まれる。
しばらく歩き、中腹に差し掛かると原田濱人(はらだひんじん)の句碑がある。
“玉麿りて いにしへの日は 永かりき”
濱人は旧沼津中学(現沼津東高)の教師をする傍ら、高浜虚子の弟子として活躍した人物である。
パーティは香陵台で休憩しつつ伊豆半島の成り立ちを聞く。その香陵台に歌人、若山牧水の歌碑がある。
“香貫山 いただきにきて 吾子とあそび
ひさしくをれば 富士はれにけり”
大正9年、東京から沼津に移住してきた牧水がまず気に入った山こそ香貫山である。
パーティは沼津の自然と文学に触れつつ展望台を目指す。

その道中、話していただいたのは東京出身のボランティアガイド大山さん。
“沼津は海も山もある、気候もいいし食べ物もおいしい。
交通のアクセスがいいから東京の郊外といった感じ”
大山さんも牧水と同じように東京から沼津に来た。
それからおよそ50年、沼津を愛し暮らしている。
このあたりは昔も今も変わらない人情といえるだろう。
あたりが夕方の優しい光に包まれるころ、芝住展望台に到着した。
出発から1時間強、眼下には駿河湾、牛臥山、沼津港、狩野川、千本浜が広がる。
もちろん天気のいい日には富士山も姿を現す。
沼津市中心部から南東に2.5km、この景色を知らないのはなんとももったいない話である。
現在、日本生命のCMでこの香貫山からの景色が使われている。
たった1、2秒なのだが、海・川・山・街が同じ画にあるこの風景はとても印象に残る。
日本人にとって身近な景色。
そしていつでも香貫山には日本の美しさがある。
春の桜、秋の紅葉、そして駿河湾に沈む夕日。
“とにかく体験していただきたい”
すべてはこの言葉に集約される。

五重塔までは車でも行け、ここからの景色も絶景だ。

【HPに戻る】