自然のサイクルの中で

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魚の放流と聞くとなんとなく可愛いイメージが湧くが、その数が10万匹(!)となるとそうも言ってられない。
場所は内浦、江梨中間育成場。
通常の漁を休み、コストをかけてまで放流をおこなう理由を静岡県漁業振興基金の影山さんに訊いた。
●稚魚の放流はだいたい8月のこの時期に行われるんですか?
「そうですね。真鯛の産卵時期が春ですから。
人工的に親から卵をとってふ化をさせ、陸上の池である程度の大きさまで育て、
それから海上のいけすで6cmぐらいまで育てるんです」
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●今回放流した真鯛はいつとるんですか?
「もう勝手に(笑)」
●ははは、そうですよね。畑とは違いますよね。
「漁師なり釣り人が釣ったときが回収されたときです(笑)漁業は農業と違って、
種まきして、手入れして、人間が決めた計画で収穫をするっていうものとは違います。
自然のサイクル、生態系に合わせて獲っていくものなんです」
●なるほど、そのなかで放流事業を行なう目的を教えてください。
「われわれの場合は本当に海の資源を増やすことを目的にやっています。
伊豆全体で70万匹ぐらい放流しようというのが今の目標です」
●昔に比べて魚が減ってきているんでしょうか?
「真鯛については統計をみると戦後静岡県下で400トン程度あったんです。
その後10分の1以下ぐらいになってしまったんです。
そこをなんとかしたいねっていうことで、
昭和50年代から人工的に真鯛等を卵から増やす技術が開発され、
放流の規模も拡大し、現在はかつてと同じ位に真鯛も増えています」
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●真鯛のほかにも放流してるんですか?
「ヒラメ、車エビ、ガザミというワタリガニ。あと、アワビとか」
●高級魚でないとコストにあわないということですか?
「そう、何十万尾も育てて放流するにはコストもかかりますから。
最近だとクエなんかも安定して供給できるようになりつつあります。
自然の力にただ頼っているだけじゃなくて、
人間が海の自然の資源を増やすよう技術が進んできたと思います」
●自然に依存ばかりしているのではなくて積極的に資源を増やしていくということでしょうか?
「漁業で大切なのは資源管理です。
乱獲せず次の世代がまた増えていくよう調整しながら漁をしていきましょうということです。
これまでの歴史になかった
“海の魚を人類が積極的に増やしていく技術”を展開し継続していくことが、
将来の海の資源を増やしていくこと、守っていくことになるんじゃないでしょうか」
我々の知らなかった海の世界。
“自然のサイクルに合わせて獲っていくものなんです”
影山さんは温かい笑顔で、次の世代につづく海の事を語ってくれた。
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静岡県漁業振興基金

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