【2017年の記事です。現在は記事のサービスを店舗で提供しておりません】
沼津銀座に店を構えて40年以上、知る人ぞ知る名店といえばバー梅邑(うめむら)である。
まさに隠れ家といった入り口を開けると2階に続く階段、2階に上がるとやや暗めの照明にバーカウンター、テーブル席も2つ、こじんまりとしたなかにどこか歴史の重みを感じさせるお店である。
マスターは沼津市内のバーのなかでも最高齢となる山城節夫さん。
沼津の街を長年見続けてきた山城さん、その佇まいやゆっくりとした口調に安心感を覚える。
“沼津のバーはそれぞれ個性を持ってやっているから面白い。みんな人生観を持ってるんです”
山城さんは東京出身、人ごみが苦手だったから知り合いのいた沼津に引っ越してきた。
店をオープンしてからは上土商店街の人々がよく利用したそうだ。
“当時はどんちゃん騒ぎです(笑)上土の人はやっぱり情があるよね。僕みたいなよそから来た人間にも優しくしてくれましたよ”
思い出話についつい引き込まれ、お酒も進む。ゆっくりと進む時間を山城さんと二人で過ごす。
お客さんのなかには男女問わずひとりで飲みに来る方も多いそうだ。
その目当ては山城さんとの会話。飾らない山城さんの人柄に惹かれ通い始める常連さんも多いという。
行きつけのバーが欲しい、梅邑はそんな願いをかなえさせてくれる。
“僕より年上のお客さんは来ないですからね(笑)みんな相談事があるから聞いてあげるんです”
店内には年代物のボトル、ブラウン管のテレビ、昔懐かしいダイヤル式電話機は今でも現役で使われている。
レコードプレーヤーには映画音楽やビートルズのアナログレコード、心地よく柔らかい音が店内を包み込む。
ここには40年間変わることなく全てのものに山城さんの人生観が詰まっている。
“いまあるものを使い続ける価値観というのかな。便利なものほどリスクが大きいんですよ。だから、昔のものを使い続けているんです”
山城さんの人生が梅邑というスタイルのバーを作り出し、居心地の良さになる。
決して気取らず、自分の飲みたいものを飲めばいいと山城さんは言う。
ひとりでバーに行くことは決して難しいものではないことを梅邑は教えてくれる。
≪梅邑BAR≫