富士山の日に酒蔵と酒屋が届ける酒~髙嶋酒造~

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静岡県では2月23日は富士山の日と条例で決められている。
その日に特別に絞られるお酒がある。
それが髙嶋酒造“富士山の日朝絞り”

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お酒に使用されるのは誉富士(酒米)、富士山の伏流水、静岡酵母NEW-5。
ラベルは歌川広重と豊国の双筆五十三次「はら」。
この絵の舞台は髙嶋酒造のある原。そしてこの浮世絵は安政のころに描かれていて、髙嶋酒造の創業が文化元年なので
もしかするとこのモデルはご先祖様に関係があるかもしれない!?ということで特別にラベルをお借りしているそう。

“地元だけでこういうお酒を造れるっていうことを知ってほしい”
と語るのは杜氏も務める髙嶋社長。

2月23日、たった1日だけに出荷された量は一升瓶約1300本。
1シーズン5万本出荷されるうちのたった1300本。
とても貴重なお酒は完全予約制。(1部酒屋で店頭販売ありだがほんのちょっとだそう)

実は“この日に絞る”と決めることはとても技術がいる事で、
通常は大体の日程は決めるものの、発酵の様子などで絞る日が2~3日スライドするものだそう。

“この富士山の日は杜氏としても挑戦。技術向上のためのチャレンジでもあるんです”
髙嶋さんにとっても貴重な体験。

お酒自体も普段ならオリが沈殿するようにおいておく。
だが今回は絞ってすぐに出荷するのでオリが残るのだ。
少し白くにごる酒には甘みがある。
純米酒しか作らない髙嶋酒造は機会も古来からの絞り機のため柔らかいな味わいが残る。
これもいつもとは違う感覚で美味しい。

生のオリがらみなので酵素が失活しない変化の大きい状態。
早めに飲むのが良いそう。
そのおいしさをすぐに飲む人に届けるためにもう一つ、いつもとは違う風景が蔵に見える。

このお酒を販売する酒屋が集まり、出荷を手伝い、その日のうち販売するのだ。

日付が変わるとともに蔵人はお酒を絞り出す。

そして朝五時半。静岡県全土と名古屋から酒屋や関係店が集まる。
まず杜氏から今回のお酒の説明を聞き、
テーブルに置かれた利き酒用猪口に酒を注ぎ、口に含んで香りと味わいを試した。

そして、神主が来ると全員でご祈祷。
富士の恵みに感謝し、お酒を清める。
澄んだ冷たい空気が流れる中、厳かに行われた。

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ご祈祷が終わったお酒はラベル貼りの作業場へ運ばれる

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“酒蔵だけでなく、酒屋さんに協力してもらうことによって広く認知し楽しんでもらう。蔵人、杜氏、酒屋が一緒になってラベルを張り箱に詰めて出荷しなければ飲む人の元へ届かない。
それは「飲む人」をより近く感じる事が出来ました”
と髙嶋さん。

鮮度がとても高いお酒だからだからこそ、その日に届けられる
静岡県の取引している酒屋だけに案内を出したそう。
あくまでもその日に売ってその日に飲んでもらうため。

それを知った名古屋の酒屋も翌年からは一軒参加。
なんと日付が変わるとともに名古屋を出て、瓶を箱に詰めるとをするとすぐに持ち帰る。
遠いのになぜ?と思うがこの言葉を聞いて納得。
“もちろん味も良いが、酒の中に入り込んでいる髙嶋さんに惚れ込んでこのお酒を届けたいと遠くても参加してます”
そこまでしても届けたいお酒なのだ。

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酒造と酒屋、酒屋同士など普段見られないコミュニケーションが
酒造りの場で行われている。

髙嶋酒造のコンセプトである“この地でしか作れない最高の地酒をコミュニケーションツールに”からさらにもう一歩、
作る“場”でもコミュニケーションが生まれていた。

別の酒屋さんに“朝早いですけど、やっぱり毎年来たいですか?”という野暮な質問をしてみると
“毎年来なくっちゃ一年が始まらないじゃない”と。

酒蔵と酒屋の信頼関係がおいしいお酒を飲む人へ届けていることを感じた。

作業のあいだ別室では奥さんたちが朝食の準備をしていた。
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この日は2種類のおにぎりと具だくさんのトン汁、と漬物。
シンプルだが奥さんたちの手作りの味は格別だ。

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“遠くは名古屋浜松から手伝ってもらうのでせめて朝食でもと喫茶去のようなものです”
その心温まるおもてなしは前日から下準備をし4時から作り出す。

杜氏も酒屋も同じ釜の飯を食べる。

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愛される酒蔵は愛されるお酒を作る。
お酒を愛する酒屋さんは、愛されるお酒を売る。
そんな朝の冷たい空気と一緒にすがすがしい気持ちのいい光景を見る事が出来た。

沼津ジャーナル取材チームは“速報ジャーナル”を試みた。
取材し、その場で編集、印刷、配布。
このお酒を買ってくれた方へ、朝に起きた特別な出来事を届けるために。
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富士山の日朝絞りはフレッシュで爽やかな香りの中に米の旨みがギュッと詰まったお酒。
魚料理全般に合うそう。

富士山の日という特別な日に、
静岡尽くしの特別なお酒を富士山を眺めながら飲む。
贅沢な1日は1年に一度。
気になる人はお酒を買う楽しみを酒屋さんで学んで、
酒蔵を身近に感じてほしい。

逃してしまった人はロットンでも飲むことが出来る。
一升しかないのでお早めに。

≪髙嶋酒造≫
沼津市原354-1
TEL:055-966-0018
http://www.hakuinmasamune.com/index.html

髙嶋酒造沼津ジャーナル記事→http://numazujournal.net/2013/09/takashimas/

写真:川上千絵

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