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和音を奏でる花~アコルト~

大岡にある小さなお花屋さん“Akkord(アコルト)”
小さな白い壁にかわいらしい窓。
どこか海外を思わせるようなたたずまい。
中に入ってみるとさらにかわいらしい空間が。
小さい中に詰め込まれた
騒々しい現実から離れて、ふと絵本の中に入ってみたような“世界”

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実は築50年。
もとはスナックだったそう。
古くて貸出をしてなかった物件だったが独立するならココ!と決めていたそう。
大家さんに直談判をし、ちょっとリメイクをし
素敵なお店が出来上がった。
まるで音色を奏でるようにアコルト色に染まっていく。

それはお店の名前にも現れている。
Akkordとはドイツ語で『和音』という意味。
植物や人が出会い、奏でる和音。
ライブ感あふれる瞬間がアコルトにはある。

オーナーの土屋聡美さんは
高校時代に偶然出会った本がきっかけで花の世界を目指すことに。
それから周囲の反対を押し切って“花一本”となる。
高校卒業後、地元のフラワーショップで経験を積み
2005年ドイツに渡る。

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近所のおばさんが花瓶を持ってきて“今日お客さんが来るからこれに活けて”だったり
なじみのおじさんが連日のように花を買いに来たりと
ドイツでみる花との生活はとても親しく、日本育った土屋さんにとって新しかった。
そんなドイツだからこその授業を多く受講した。
その時、1日中森を歩く授業や
アーティストのための森の授業。

日本では“材料”としか見れなくなっていた花に
“命”を見ることできた。
そんな植物との生活の中で自分の店を持つとう夢ができた。

”生花は枯れてしまう。
だが枯れるからこその良さもある”

たった1本でもいい。
たった1本のお花でも楽しみ方は充分にある。

そんなお花を生活に取り入れる方法を聞いた。

初めはその長さで、
その後は少しずつ茎を切っていき、
花瓶にしたり、コップにしたり。。。
楽しみ方は幾通りもある。と。

使う花、使う花器、花の数、、、
その時その時で奏でる和音で変わっていく。
だからお花はこころを豊かにして、癒してくれるのだろう。

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ドイツで学んだだけあって、クリスマスには人一倍の思いがある。
クリスマスまでの時間を楽しむことも大切にする。
そんなアコルトで開催されるのがクリスマス市。

12月1日(日)2日(月)の二日間。
アコルトはクリスマス一色になる。

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《アコルト》
沼津市山王台9-12
TEL:055-960-9577
http://akkord.jimdo.com/florist/

アコルト~クリスマスを彩るアレンジの会~
・参加費:1000円 +材料費3000円~(容器をお持ちの場合はお花代のみ)
・日時:12月8日(日) 1回目:10:30~ 2回目:15:00~
    12月10日(火) 1回目:10:30~ 2回目:19:00~ (所要時間:約1時間)
・申し込み締め切り:各日2日前の18時まで
※材料手配の関係上、必ずお申込みをお願いいたします!!!
・定員:各回10名

詳しくはこちら★
8日の申し込み→http://lotn.jp/events/akkord/
10日の申し込み→http://lotn.jp/events/akkord2/

沼津から世界へ発信し続ける理由

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獅子浜にあるタムタムギャラリーは目の前に海が広がる絶好のロケーションだ。
ここは2009年に沼津市出身のアーティスト、田村映二さんが開いたギャラリー。
お茶や食事をいただきながら田村さんの作品を鑑賞することができる。

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“ここにギャラリーを作りたいっていうのが夢だったんです。自分が求めていれば夢はかなうのかなと思います”

31年前にそれまで勤めていた東京のグラフィックデザイン会社を辞めフリーとなる。
現在のような立体の作品を作り始めたきっかけはブリキのおもちゃ博物館などの館長を務める北原照久さんにある。北原さんと親交があった田村さんは北原さんの持っているおもちゃが欲しくなり、だったら自分で作ってしまおうと考えたのが理由だ。
1988年、日本テレビ「美の世界・アートナウ・田村映二の世界」に出演したことにより一躍人気アーティストとなる。国土交通省のポスター、百貨店のポスター、愛知万博招致のポスターなど多くの場所で田村さんの作品を目にすることに。オファーが殺到し、仕事しているか寝ているかという状態がしばらく続いたという。
そんななか、もっと人間らしく生活したいと考えたときに故郷である沼津にアトリエを開いて生活したいと考えるようになる。

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“東京のオシャレなお店とかも好きなんですけど、釣りやバーベキューとか趣味がアウトドアなので沼津のほうがあってるんですよ”
創作の原点は子供の頃の記憶。子供の頃に感じた風や空気の匂い、五感に訴えてくるもがベースになっている。沼津から発信したいという想いが沼津での制作に繋がる。
作品を発表することによって沼津に目が向くように、そんな役割を担えたらいいと田村さんは言う。
今年、台湾でタムタムミュージアムがオープンした。
世界でもそんな作品は注目される。

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駿河湾や狩野川、そして富士山という沼津の環境は世界を旅した田村さんからみても誇れるものだそうだ。
だから、地元の自然をもっと楽しんでほしい。おにぎりを持って海に行ったり、そんな光景が当たり前であってほしい。そういう楽しむ心をみんなが持つことで魅力的な街ができる。
タムタムギャラリーからも様々な海から見る景色が広がる。

雲間の陽光が海を照らす。

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海に太陽が沈む時、その世界は一面に紅くなる。

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海に暗闇がやってくると、対岸の沼津の街が輝きだす。

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それはそのまま田村さんの作品の世界である。どこか暖かく魅力的な場所。

2013年の冬、そんな田村さんの世界観を伝える作品が海沿いのタムタムギャラリーから、沼津の街に移された。

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お店に搬入していると通りがかりの方が足を止める。
作品のストーリーを丁寧に伝える田村さん。

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あげつち商店街にイルミネーションの期間中、タムタムドリームストリートが登場した。
商店街に田村さんの創造の世界が街に溶け込んだ。

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≪タムタムギャラリー≫
沼津市獅子浜22-28
電話:055-933-2030
土日のみ営業
http://www.tam-tamgallery.com/

【HPに戻る】

もうひとつの台所~daidocoro~

仲見世商店街の脇道に表れるおしゃれな空間がある。
外を眺めるとおじいちゃん、おばあちゃんが井戸端会議。
なんだかほっとする景色がそこにあり、このおしゃれな空間と相まって心地が良い。

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横幅は2メートル弱。
コンクリートがむき出しとなった壁にスタッフのあるあったかみのある黒板に書かれたメニュー。

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“たまたま美大を出たスタッフがいるんです。ぱぱ~っと書いてくれて。
僕も書いたですけど、全部却下になったんっす”
おちゃめに答えるオーナーの山田時範さん。

女性客が多いdaidocoero。
彩の野菜たちがきれいなバーニャカウダや
実家の蜂蜜を使ったピザ。
そしてパスタ屋で修業を重ねた自慢のパスタ。

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→この日の日替わりランチのパスタ“自家製スモークのプッタネスカ”この他ランチには前菜とドリンクがつく。980円~

どれもこれも彩鮮やか。
伊豆の名産“潮かつお”を使用したクリームパスタや
沼津のサバを使用して作ったアンチョビなど地のものを工夫して使用している。

このお店を始めて3年目になる。
デザイン事務所ケンブリッジの森さんによる設計なのだ。
daiocoroという空間がオーナーとデザイナーさんによって生まれた。

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実は将来の夢はバイク屋さん。
バイク屋にカウンターをつくって珈琲や軽食をだして、バイカーの集う店にしたかった。

そんな山田さんがなぜ?

高校を卒業してから
自衛隊で働いているときに、上司に料理の道へすすめと自衛隊を辞めた後のために調理の専門学をすすめられ調理師となる。
だがあきらめられなかったバイクの道に。
そこで命を預かるバイク屋の現実を知り夢破れた。
”あきらめがあったんです”
素直にこう答える山田さん。
最終的に料理の道に入ることになったのだ。
だが、命の重みを知ったからこそ
縁や食材を大切にしその想いをdaidocoroに詰め込んだ。
それは、店の前に置いた燻製の機械で地元の豚肉を燻製したり
地元ものもをふんだんに使うところにも出ている。

大事にしていた縁のひとつが空間にも表れる。
10代のころから自分を知っているケンブリッジ森のデザイナーの藤原さんに相談。
(余談だが藤原さんのお父さんのやっていた飲食店で友達がバイトしており
一緒にまかないをもらうようになったりと藤原家と縁があったそう)

厨房のレイアウトだけは山田さんが考え
後は店舗全体のレイアウト、家具も食器もメニューもなんとお店の名前もすべて藤原さんが担当。

“daidocoroという名前も最初はえーと思ったんだけど
藤原さんがぱぱぱとノートにロゴを書いたんっす。
もうかっこいいんすよ”

その藤原さんの作り出す洗練された空間と山田さんのおいしい料理は若い女性に特に人気となった。

お店にはもう一つの大切な縁。
実家の養蜂所のはちみつを味わえること。
メニューのいつくかにはその蜂蜜が使われている。

”親孝行も兼ねてつかってたんすけど、今は蜂蜜自体も売れて料理で使う分だけとりよせています”
苦労を掛けたご両親への愛情は
ひとつひとつ丁寧に作られる料理にも表れている。

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女子会でもデートでも一人でも。
自分の家ともう一つの“台所”。
縁を大切にするこの地域ならではの“食”が存分味わえる。

≪daidocoro≫
沼津市大手町5-7-21
TEL:055-963-6500
http://www.daidocoro.net/index.html

柔らかい光、優しい空間で写真を撮ること

夜にビルの3階でなにやら怪しく光る部屋があるので気になっていた。
入り口は美容院の中、特に表札もでていない。
何だろうと部屋に入ると真っ白な部屋、そしてデスクトップのパソコンが並ぶ。
殺風景な景色の用で柔らかい光が入り、優しい空間がそこにはあった。
すこし特別な隠れ家的な場所を見つけた気になるここは写真スタジオだ。

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※駐車場側から撮影

オーナーの梁さんにお話を聞いた。
どうして写真屋になったのですか?という質問に
“横文字の仕事に憧れてたんだよ。その当時、大学の写真科は実技がなかったから行ってみた、それだけ”
と照れくさそうに答える。

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自分のやりたかったことをやりながら暮らしていくのはそう簡単ではない。
ただ、人の縁を大切にし、やってみようという一歩を踏み出せるのかどうか。

写真屋になろうと思い、
九州の大学を卒業した後、いくつか地元の写真スタジオで修行をした。
その一つのスタジオでオーナーがスタッフの独立を応援していたこともあり、
その第一号として、会社に間借りをし一人で写真スタジオを始めたそう。

その後、縁あって通っていた美容院の3階のスペースが開いているので写真館にしようという話になり
今の場所が始まった。
今年で3年目となる。

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リノベーションをし空間は太陽の光が多めに入るスタジオになった。

自然光で撮影するときもあるし、ストロボで撮影することもある。
そのときそのときの時間帯でかわるベストな方法で写真を撮影していく。

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毎回その都度、撮り方を変えるのは大変だからいつもストロボで撮ればいいのにと聞いてみると
“目的はきれいに撮ることだから”と。

その日その日によって変わる。
自分だけでなく環境もその日その日で変わり
沼津の自然がおりなす空気で写真を撮っていく。
それは“ちゃんと写真をとってもらう”ことをする特別な想いに+αの楽しみがある。
その日の気分で狩野川で撮影なんてことも。

学校の記念写真やウエディングフォト、家族写真、七五三など
あらゆる記念日にも対応。
出張もしてくれる。
1階にある美容院を利用することもできるのでスタイリングからお任せできる。

写真を記念日にとるのもいいし、
ちょっと天気がいい、いいことがあった、気持ちを切り替えたい、髪を切ったなど
自分で特別な日をつくってもいい。

さまざまな要素が相まって一番自分らしい表情が撮れる場所。

それは梁さんのこんな言葉にも現れている。
”地元に想い入れがあるなら、仕事は自分で作るしかない”
そのやりたいことをやりたい場所で素直にすることで縁も集まってくる。

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梁さんが生み出す沼津のリズムと一緒に
自分らしい写真をとってみるものいいと思う。

ミノリフォトワークスタジオ
沼津市魚町21 植松ビル3F(入り口は1FのADESSOと同じ)
tel:055-919-5871
fax:055-919-5872

親子三代、86年間鶏一筋

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沼津市本町は東海道、沼津宿の本陣があり大いに賑わった場所だ。
かつて沼津映画劇場があった場所は江戸時代、杉本旅館という旅館だった。
また、芝居小屋なども立ち並んでいたそうだ。
本町の歴史を丁寧に説明していただいたのは鳥佐商店のご主人、泉勝久さん。
鳥佐は昭和2年から本町で鶏肉の専門店として営業している。

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“もともとは沼津駅前に鳥丑という鶏肉専門店だったんです”

鳥丑から泉さんのおじいさんにあたる佐一郎さんが独立、鳥佐商店として開業したそうだ。
専門店としてこれまで続いたのはやはり鶏肉に対するこだわりがあるからだ。
主力商品のひとつである鳥のもも肉は先代の頃から変わらず岩手県のあべどりを使っている。
あべどりは鶏肉特有の臭いが少なく、肉はピンク色で脂肪が少ないのが特徴だ。

“炭火で焼くと一番美味いですよね”

家庭で調理する場合はフライパンにオリーブオイルをひき、鶏肉に塩コショウして皮面からトロ火でじっくり20分ほど焼く。焼き色がついて火が通ったなと思ったらひっくり返して1分ほど焼き、あとは余熱で仕上げる。そうすることで皮はパリッとして中はふっくら出来上がる。
専門店だからこそ言える鶏肉のおいしい食べ方を教えていただいた。

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“こだわりをもってるお客さんがいてくれるから成り立つのかもしれません”

時代の変化とともに客層も変わっていった。
買い物の効率を求めるとスーパーなどで他のものと一緒に買ったほうがいい。
わざわざ鶏肉だけを買いに来る必要はないのかもしれない。
それでも、鳥佐には鶏肉だけを買い求めにお客さんが来る。
近所だけに限らず三島や函南、遠くは戸田や修善寺からもここの鶏肉を買いにやってくる。

“牛や豚を扱おうと思ったことは一度もありません。うちは鶏肉だけで勝負しています”

専門店として決してぶれないスタンス。
スタッフの活気あふれる店内に今日も客足が途絶えない。
商品もクリスマスにぴったりなひなどりを1羽まるごとだったり、
人気の焼き鳥はハツ、せせり、軟骨など常時10種類以上あり、産地が違うもの、鳥のあらゆる部位がある。
また調理方法によってはその場で切ってくれる。

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Lot.nの提供するバーベキュー食材は専門店から仕入れている。
鶏のもも肉は鳥佐商店からだ。

専門店を巡って買い物をすること。
厳選した鶏肉と教わった食べ方、食材の話を食卓で披露する。
その食事はまた美味しさを増すことだろう。

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鳥佐商店
沼津市本町21
電話:055-962-1241

鳥佐

寿司屋のカウンターで気軽に食べる方法

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沼津と言ったら寿司。
寿司の醍醐味は旬の魚をおいしく感じられること。
カウンターで職人の握る技を見ながら食のストーリーを聞くのも楽しみの一つだ。
しかし、寿司屋でのマナーや値段の問題などで敷居が高いと感じて敬遠してしまう。
沼津市では気軽に寿司屋の楽しさを味わえるよう「カウンターで寿司食いねェin沼津」キャンペーンをおこなっている。これが何とも地元の人にも観光客の方にもうれしいキャンペーンなのである。

今回は協力店のひとつ、大岡にある寿司の大将を訪れた。
暖簾をくぐると威勢のいいあいさつが出迎えてくれる。

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気分は一気に寿司モード、さっそくキャンペーンのおまかせコースを注文する。
寿司の大将は沼津市出身のご主人、鈴木喜久男さんが29年前に開いた店だ。

“それまでは東京で修業してたんですけど、沼津に戻って店をやりたいなと思って”

もともと寿司を食べるのが好きだったから寿司屋になることにしたという鈴木さん。
好きこそものの上手なれ、この分かりやすさは好感が持てる。
そんな会話をしているとサッと出されるバチマグロの赤身。
美味い!やはり目の前で握られる寿司が一番だ。

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寿司はカウンターで食べるのが一番おいしいというが、はじめてのお店でカウンター食べることはなかなか勇気がいる。だが、この「カウンターで寿司食いねェin沼津」はおまかせコース3,150円と値段が決まっているので安心。沼津の寿司を気軽に楽しむことができる。

“都内と比べるとやっぱり鮮度が違いますからね、なるべく地のものを出したいと思っています”

アジやシラス、サバはもちろん、駿河湾のトロール漁で獲れたタチウオや手長エビなどその日の仕入れによってコースの内容を変える。県外からの観光客も沼津ならではのネタに喜んでくれると鈴木さんは言う。

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こちらの食べるペースに合わせて、テンポよく握られる寿司。
鈴木さんが自信を持って勧めるインドマグロのトロや職人のひと手間が加わる穴子など次々に目の前に出される。そのひとつひとつに必ず一言つけてくれるのが嬉しい。カウンターだからこそのやり取りを楽しむ。

“カウンターで握りたてを食べるのが一番いい状態ですからね。僕らも修業時代は隠れて食べたりして。盗み食い、あれが一番美味かったですよ(笑)”

自然と会話は弾み、あっという間におまかせコース13品を食べ終わる。

“好きに食べて、自分なりに楽しんでいただければいいんです”

鈴木さんは満面の笑みで幸せな時間を締めくくる。

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寿司屋でのマナーが掲載されているカウンターデビュー応援ブックも制作されている。
ロットンにも置いているのでぜひチェックをしてカウンターへ!
「カウンターで寿司食いねェin沼津」協力店は26店。
沼津港、沼津駅付近、郊外のお店でいつでもこのサービスを利用できる。
参加店舗一覧をこちらで確認して頂きたい。
http://www.city.numazu.shizuoka.jp/kankou/taberu/sushi/supporter.htm

寿司の大将
沼津市大岡自由ヶ丘1977-8
電話:055-924-2895

カウンターで寿司食いねェin沼津
http://www.city.numazu.shizuoka.jp/kankou/taberu/sushi/

歌舞伎を見る~沼津の段~

浄瑠璃や歌舞伎の題材として敵討ちがある。

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その題材の中でも有名な一つに沼津での物語がある。
それは伊賀越道中双六(いがごえんどうちゅうすごろく)の“沼津の段”だ。
敵を追う主人公たちの移動につれてさまざまな人々の義理と恩愛とにからんだ悲劇が次々と東海道筋に展開されていく。
沼津警察所裏の狩野川のほとりに、この物語の地蔵尊があり毎年7月にお祭が行われ沼津の人々に親しまれている。

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「沼津の段」は屈指の名場面とされ、親子兄妹の悲しい対面の物語が感動を呼ぶ。
この沼津の段は単独でもたびたび上演されるほど。

今回はその沼津の段が上演されるということで国立劇場に歌舞伎を見に行った。
さらに今回は通し狂言の伊賀越道中双六(いがごえんどうちゅうすごろく)。
江戸時代後期から一つの演目を通しで上演することは珍しいらしい。
前後がわかるということでより沼津の段がよ楽しめるとのこと。

国立劇場(本館)PR用データ 030

国立劇場は半蔵門駅から徒歩3分、正面に行くとのぼりやちょうちんが飾られている。

パンフレットを買って席に着く。

国立劇場(本館)PR用データ 032

まずパンフレットで物語の内容を確認。
人それぞれだがある程度物語をわかったうえで見ることによって
理解しながら見ることができるのでちょっとしたユーモアにも気づくだろう。
加えて音声案内を借りるのも手だ。

幕が開き、着物に身をつつみ独特な化粧をした女形の人たちが話し出す。

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“思ってたよりも言葉が聞きやすい”
のが第一印象。
歌舞伎に対して“難しい”と思ってたがそんなことはなく
すんなりと入り込むことができた。

そして舞台の両端には
語り手と尺八、太鼓。。。
生の音色が響き渡る。

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歌でもなくでも、ただしゃべっているのではない独特な語り口調。
そして客席から名場面などで「よっ!」という声や各役者の所属先の名前を呼ぶ声が飛ぶ。
慣れていない私は、驚くことが多い。

歌舞伎では休憩が何度かある。
一番長い35分間の休憩で多くの人はお昼をとる。
開演前にレストランの食事も予約でき、
ビーフシチューやチラシ寿司などバリエーションも豊か。
もちろんお弁当やサンドイッチも売っている。
持ち込みも大丈夫だ。
開演中は食事はできないが休憩中は客席でご飯を食べても大丈夫だそう。
私はローストビーフサンドイッチ800円を買って外のベンチで食べた。

つかのまの休憩をはさみ、3幕はいよいよ沼津の段。
最初の屋敷のセットはがらりと変わり
富士山と松。そして川。
親しみ深い景色へと変わる。

そして会場の中を役者があるくというサプライズも。
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東海道宿場町、沼津。
1里と短いながらもかつてあった三枚橋城と狩野川を迂回するようにかくかくと曲がり進む道。
その面影は今では看板などささやかながら沼津に残っている。

会場のロビーには土産物屋やお弁当屋などが並ぶ。
歌舞伎揚げのお菓子のパッケージでおなじみのカラーにちょうちん。
ちょっとしたテーマパークのようでわくわくする。
今回は沼津の段と絡めて沼津物産協議会による店舗も出店していた。

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お茶、ひもの、平作もなかなどの沼津を代表する物産が並ぶ。

伊賀越道中双六をテーマにした「平作もなか」を創業よりつくるいせや本店代表の居山直行さんに話を伺った。
いままでも小劇場では演目がかかるときに販売していた。
今回、初めて大劇場平作もなかが並ぶ。

なぜ平作もなかが出来上がったのか。
“戦前戦後このあたりは大きな企業でいっぱいだった。
その中で、接待につかう料亭やお土産に菓子屋、
このあたりのお店は新商品を作ろうといつも考えていた。
その中で先代がこのテーマに目を付けたのが始まり”

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いせや本店が題材にしているもの、
平作のほかにも、江原素六や千本松、狩野川。

決して、派手ではないが地元になくてはならないもの。
そして地元のベースを作ってきたもの。

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今では国立劇場と一緒に物産を販売や企画をしたりと
歌舞伎にも力を入れている。
修行をしていた大阪のお店の近くにも浄瑠璃の劇場があったらしく
“歌舞伎を題材したお菓子を作り、今こうやって歌舞伎にかかわっているのは運命なのかも”
と。

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沼津という地が過ごした時の流れ。
その流れを歌舞伎で表現すること
お菓子で表現すること。

東海道が残していく物語、そして伝統芸能である歌舞伎は
今もこれからも続いていく。

国立劇場
東京都千代田区隼町4-1
TEL:03-3265-7411
★通し狂言伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく) 四幕七場は2013年11月26日(火)まで開催中

いせや本店
静岡県沼津市幸町2番地
TEL:055-962-0222 / FAX:055-962-0223

戦災前から続くフルーツ店

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昭和28年、いまだ空襲の傷跡が残るなか、沼津アーケード名店街は戦災復興の象徴として建設された。
そのアーケード名店街ができる以前から店を構えるのが老舗フルーツ専門店、アーケードフルーツ。
代表取締役である橋本光弘さんは3代目にあたるそうだ。

“一番最初は饅頭屋だったそうです。おじいさんの代からフルーツを売るようになったんです”

店頭に並ぶのは季節のフルーツ。この時期はみかんや柿、リンゴなどが並ぶ。
客層は地元の方々がほとんどを占めるが、長泉町の四ツ溝柿を求めて毎年この時期に注文をする都内の方もいるそうだ。
四ッ溝柿は独特の甘みがあり、果肉は柔らかく、ジューシーな味わいがあるとのこと。
そういった説明が一言加わるのも専門店の嬉しいところだ。

西浦みかんなどもあり地元のフルーツを知れて観光客の方にもおすすめだ。

郊外の大型店に客足が伸びるなか、それでもこの場所で昔ながらの商売を続けることにこだわる。
長年、この商店街を見続けてきた橋本さん。
橋本さんが子供の頃には芸者さんが住む花街が本町にあったそうだ。
アーケード名店街には百貨店の松菱があり、アーケードフルーツも夜11時まで営業していた。

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“本町に映画館があったんで、映画が終わってからフルーツを買って帰るお客さんもいたんですよ”

当時、本町には沼津映画劇場をはじめ映画館が何軒か立ち並んでいた。
映画の上映が終わった夜11時、お土産としてフルーツを買って帰る人の姿もあったそうだ。
その後、駅前に西武ができ、時代とともに賑わいは沼津駅南口に移る。
時代が変わり、人通りも変わった。
そういった状況にあって90年間、フルーツの専門店として続けてきた。

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“フルーツはその店独自の味を出すことが難しい商品なんです。だから、差を出すのが難しい”

24時間営業の大型店もでき、コンビニでもフルーツは買えるようになった。
それでもアーケードフルーツを目指してくる常連さんがいる。
橋本さんに会いにやってくる。そこには昔も今も変わらない人情がある。
街は変わっても、変わらないものがここにはある。

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アーケードフルーツ
沼津市町方町58
電話:0559-62-4485

眼鏡を選ぶ過程を楽しむ~グラスファイン~

【2013年の記事です。現在は記事のサービスを施設で提供しておりません】

駅から歩いて上土商店街にはいるとすぐグラスファインというメガネ屋がある。
中にはきれいに並べられためがね。
それはどれもこれもデザイン性に富んでいる。
そしてオーナーの荒川さんの雰囲気と相まって落ち着いてもいるし、あったかい雰囲気もある。

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実家は眼鏡屋。でも眼鏡屋になりたいとは思わなかった。
だが、東京に行きたかったという理由でメガネの学校に通った。
そのまま大手メガネ店に務めるものの楽しいとは思わなかった。
むしろサーフィンに没頭していた。
そして静岡に戻り、実家を手伝いながら海で遊び
貯めたお金で時計の学校に通い、時計を修理する職人になろうと思っていた。

そんな荒川さん、今は眼鏡屋。

その理由。
たまたま大阪に先輩が独立してメガネ屋をオープンさせるということで遊びに行った。

“いわゆるこういう(今のグラスファインのような)メガネのセレクトショップのようなスタイルの
メガネ屋をやっていたんですよ。
その人が人間的に魅力がある人だったことも合わさってこれはやばいなと。
こういうスタイルだったら眼鏡屋をやってもいいなと思ちゃったんです”

その帰りの新幹線でメガネ屋をやる決意をした。
次の日から物件を探し始め1年ほどでスタートさせる。

最初のイメージ、
それは駅から離れたちょっと静かな商店街の中で
小さな眼鏡屋をやること。

まさに今のお店。

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静岡東部でやるならなんとなく沼津とおもっていたのだが
当時はデパートも多く条件にあう空き店舗がなかった。
納得はできなかったがもう探し始めて1年がたっていたので
どこでもいいからやるかと、物件が決まりかけた帰り道、
上土商店街にポンと空いている所。
すぐ電話して見せてもらい、即決。
たまたまその日に空いた物件だった。

“目的のある人が来てくれる距離感”
お店を始める時は不安が大きかっただろう。
実際に聞いても、

“最初は全然うまくいかないですよ
最初の2~3年は生きた気がしなかった”

セレクトで眼鏡屋をやっているのはなかなかなかった。
だがお店をはじめて13年、確実に築きあげてきたものがある。
荒川さんのお店には大切にメガネを選ぶ人が来る。
メガネをとにかく売るのではない。

“お客さんにとって一番気に入ってもらえるもの
一緒に選びたいんです”
と荒川さんは言う。

こだわりぬいてセレクトされたものは
デザインも、品質もよく、
何よりその人の新たな自然な空気感をつくる。

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以前、私も仕事を辞めた時に心機一転しようと
メガネを買いにった。
何度も何度も通い、
2か月かけてメガネをやっと決めた。

毎回一緒に悩んでくれ
“気に入ったら買えばいいよ”
と言ってくれた。
そして大切な一つを買うことができた。

“人が人のためを想って作ったものを
人が想いを込めて人に紹介する。”

≪グラフファイン≫
沼津市上土町72-5
TEL055-954-3663

本物に出会う経験をする場所~まきじ きざし~

【2013年の記事です。】

“職人にはこだわりがなければならない。
職人はひとつひとつ丁寧に教えたり、伝えなければいけない。
リードするのが職人である”
そう話すのは狩野川のすぐそばに店を構える
まきじ きざしの大将、小田島長次さんである。

まきじ きざしは東京日本橋で修業を積んだ大将による
沼津を代表する料理屋だ。
沼津でお店を構えて20余年になる。

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料理人ではないお客さんが
料理を食べる時、
この食材が安全かどうか。
これは違うと気付く人がどれだけいるか。
多くの人は気づかないだろう。
嘘偽りのないものが並ぶのが大前提だから。
それを真摯に守り、伝えていくのが料理人だとまっすぐと伝えてくれた。

料理屋で食べる楽しみの一つとして料理人からの説明がある。
うるさく言われることや押し付けられることが嫌だという人もいる。
だからこそ“信頼関係”が必要だと。

“静岡には「本物」がある。
わさび、お茶、魚。。。
こんなに豊かな本物を使わないということはもったいない。
そして静岡の良さ、沼津の良さも含め、その「本物」を料理人は伝えていかなければいけない”
と言う。

だが、最近では国産の“本物”を使うとコストがかかってしまう。
だからといって同じものを冷凍や海外のもので代用しようとしても意味がない。

貴重なものは貴重なまま、本物のまま食べるのが必要に感じた。

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時代の流れとともに失われつつある本物。

“職人ができること。
それは本物だけど貴重ではない食材に手をくわえ上手に使うこと。
そして貴重な食材と合わせて使うこと。”

たぶん本物に触れることは努力しないとできないのだと思う。
緊張してもお店に行ってみる。
食べてみる。
お金を払ってみる。

毎日というわけではない。
記念日や嬉しい事があった日。。。
私たちの意識が本物をどんどん手の届かないところに追いやってしまう。

食材もそうだが器やカウンターにもこだわりがある。
白の漆で塗られた真っ白のカウンター。
出会ったことがなければ扱いも変わってくる。
器も欠けてしまっても金継をして大切に使う。

大将が一生懸命つないでくれている、
本物との懸け橋。

“本物がなくなる世の中なら生きていてもしょうがないですから”
大将のまっすぐで嘘偽りのない言葉。

伝統を守り続けてくれることで
失われない“本物”
本物に出会える靜岡という場所。

料理屋に入るときもう一つのポイントを教えてもらった。
作法や食材など、わからないことは聞くこと。
そして、
“なにかを持って帰ること。
純粋に勉強したい、知りたいと思うことは料理のことでも器のことでもなんでも聞いてください。
このお浸しおいしいですね、どうやって作るんですか?というのでもいいんですよ。
素直に美味しいって感じてくれて聞きたいって思ってくれれば料理人は喜んで答えます”

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本物がある場所で学べることはたくさんある。
本物に出会わないと学べないことがたくさんある。

まきじ きざし
沼津市魚町5番地201-1(シャリエ御成橋2F)
電話/FAX 055-951-0223

営業時間:昼席 12:00 ~ 14:00 夜席 17:00 ~ 21:00 日曜日休み