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御用邸と大中寺芋のつながり

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10月の終わり、中沢田の畑で大中寺芋の収穫が行われた。
大中寺芋とはこの地域で収穫された里芋につけられた名前である。
特徴は赤ん坊の頭ほどになるというその大きさ。
普段我々が食する里芋は子供の芋もしくは孫芋。それに対して大中寺芋は親芋だという。
その味は不思議なほど、きめ細やかでまったりとした味である。

“煮物にして食べるのが一番シンプルでいいね。家庭で普通に食べられてきたんで今まで残ってきたんです”

答えていただいたのは生産者のひとり、井出栄一さん。
実は井出さんのお父様である井出貞一さんこそがこの大中寺芋の種芋を絶やさずに作り続けたのだ。
現在はご子息である栄一さんが大中寺芋の会を結成し守り続けている。

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では、なぜ大中寺芋という名前がついたのか。
名前の元となった大中寺は臨済宗妙心寺派の禅寺。
明治31年、大正天皇が愛鷹山への狩猟の道すがら大中寺へ立ち寄られたことをきっかけに大中寺はしばしば皇室のお成りを仰ぐことになった。
大中寺ではその都度、名産の里芋を用意し、お土産としても用いたそうだ。
また、警備の警察官に煮て振る舞ったとも伝えられている。
こうして御用邸では大中寺の里芋ということで、いつしか大中寺芋と呼ばれるようになった。

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“お歳暮になると70軒ぐらい大中寺芋を配るんです。そういったことが積み重なって今日があるんですよ”

大中寺の住職、下山光悦さんはそう語る。
生産者と消費者、立場は違えども地道な努力が大中寺芋の普及に繋がる。
地域の伝統的な食を地域で守る、シンプルだけど大切なものがここには残っている。

そんな沼津の食を存分に味わう機会が11月9日、10日と御用邸で行われる“松間の饗宴”である。
大中寺芋も沼津を代表する食材として料理人の手によって調理される。
それは御用邸と大中寺との関わり、歴史を感じさせてくれるものになるに違いない。

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