“もともとはお肉屋さんでメンチなど販売していたのを主人がパンにはさんで売るようになったんです”
インタビューに答えていただいたのは桃屋の内田耀子さん。
沼津に欠かせないソウルフード、桃屋の惣菜パンは東京オリンピックが行われた昭和39年に生まれた。
その発想の原点は映画だったという。
映画館が多かった当時の沼津で少年時代を過ごしたご主人は大好きな映画の中に出てくるターザンやロビンフッドといったヒーローたちが焚火にあたりながら食事をとる風景を観て、惣菜をパンにはさめばアウトドアでも食べることができると思ったそうだ。
初めはハンバーガーのバンズのような形のパンを使っていたが学生のお腹をいっぱいにさせてあげたいと思いコッペパンに変えた。
“コロッケをパンにはさんだだけだとむせてしまうので和風の甘いたれを作ったんです”
こうして現在まで変わることない桃屋の惣菜パンが完成した。
一見・・・、いやよく見ても素朴。
その人気は幅広く、地元の沼津市民はもちろんなぜか県外からのお客さんも来る。
桃屋の惣菜パンを持って狩野川や千本浜へ行くというシチュエーションは沼津ではよくある風景である。
小さいころに親に連れられてよく食べていた、学生時代お腹が減ってはよく買っていた、そんな思い出をそのままに大人になっても通う常連客も多い。
親子三代に渡って桃屋のファンという方もいるそうだ。
カツサンド、メンチカツサンド、お好みサンドなど人気はやはりお店独自の甘いたれ。
これが病みつきになるから不思議だ。
“週末とか多い時は1000~1100個売れます。もう油まみれになりますよ”
耀子さんもまさか自分が桃屋に嫁いで、惣菜パンを作るとは思っていなかったそうだ。
近所のデパートガールとして働いていた耀子さん、桃屋の惣菜パンが好きでよく買いに来ていたところ、ご主人から猛烈なアプローチを受けたという。
“あまりにもしつこくて、とうとう断りきれないで、お嫁に来てしまいました(笑)”
家族で守る桃屋の味、決して変わらないその味には多くの思い出が詰まっている。
桃屋の惣菜パンを持って沼津の街を歩く。
それは沼津の“今”の物語につながる。
そして、良き時代の物語を多くの人は思い出す。
≪桃屋≫
沼津市町方町5
TEL:055-962-7824