若山牧水は明治18年、宮崎県に生まれる。
旅を愛し全国を旅した牧水が沼津の自然、特に千本松原の景観に魅せられ一家で移住したのは大正9年。
そんな牧水の足跡と業績を貴重な資料を通じて知ることができるのが、沼津市若山牧水記念館である。
“この記念館はもともとは募金でできたもの。言ってみれば市民のものなんです”
記念館を運営する公益社団法人沼津牧水会の理事長、林茂樹さんは語る。
昭和56年、牧水が最も愛した千本松原に記念館をと募金活動が始まる。
その募金により集められた約6千万円の寄附金が沼津市に納められ、昭和62年に建設されたこの記念館はまさに市民の手によって作られたものだ。
それは歌人としての功績を讃えると共に千本松原の保護に尽力した牧水を忘れないためのものである。
“この記念館がここにあるということは非常に意味があり、責任があることなんです”
牧水が千本松原に隣接する土地に住居を構えてからしばらく後に静岡県による千本松原の松の一部を伐採する計画が起きた。
牧水はこれに反対して、『沼津千本松原』と題する文を新聞に投稿。
松の伐採に反対する市民大会では熱弁をふるうなど伐採反対運動の先頭に立つ。
その結果、県は計画を断念することとなった。
これは自然保護運動のさきがけともいうべき出来事であり、郷土の誇れる歴史である。
林さんに展示室の資料を説明していただきながら館内を一通りまわった後、記念館の裏手から千本浜にでることとした。千本浜に下りてみるとそこからは松原と愛鷹山、富士山という景色が見える。
“千本浜にでると牧水の心に触れたような気分になるんです。この景色というのは全国に誇れる景色だと思います”
都会の喧騒を離れ、沼津の自然のなかで生きていくことを決めた牧水。
牧水が愛し、歌に詠んだ景色は今も変わらずそこにあった。
牧水が市民と共に守った千本松原、その一角に市民の力で建てた記念館。
ここには牧水と市民の深い繋がりが確かにある。
≪沼津市若山牧水記念館≫
沼津市千本郷林1907-11
TEL:055-962-0424
営業時間:9:00~17:00 (入館の受付は16:30まで)
休館日:毎週月曜日 (祝日に当るときはその翌日)
料 金:大人200円 小人100円 (小・中学生)
http://web.thn.jp/bokusui/index.htm