“私は3代目なんですけど、まだ140年位しか経ってないです(笑)”
笑顔でそう語ってくれたのは沼津竹材センター浅宮商店の浅宮義和さん。
竹の専門店としてその歴史は古い。
当時は人の暮らしも現在とは異なり、竹は生活の中で多く用いられていた。
海からの風が強い沼津、その潮風から家や農作物など人々の生活を守った沼津垣もそのひとつといえる。
我入道や千本など海辺の町には多くの沼津垣があり、それを作る職人も多く住んでいた。
そんな職人に材料となる竹を卸していたのが浅宮さんだ。
“沼津垣には箱根の篠竹を使うんです。竹は潮に強く加工もしやすいため、海辺の町の垣根としては都合がいいんです”
実用的にも景観的にも優れている沼津垣、その技術を持つ職人さんも少なくなった。
竹自体の需要も減った。一昔前はザルやホウキなど日常のなかに竹でできたものが多く存在した。
竹はもっと身近なものだったのだ。幼少期から家の仕事を手伝ってきた浅宮さんにとって竹は人生そのものであった。それを表すかのように浅宮商店には3階建てからなる竹のショールームがある。
ショールームの中には多種多様な竹製品、竹細工、美術品が所狭しと並ぶ。
ひとつひとつ嬉しそうに説明を加える浅宮さん、竹について話すことが本当に楽しいそうだ。
“日本というか東洋の文化にとって竹はかけがえの無いものなんです”
文化を守るという強い気持ちが店を守り続ける姿勢となる。
より多くの人に竹に親しんで欲しい、そんな想いがショールームには詰まっている。
また、伝統的な沼津垣の技術を絶やさないよう、現在は4代目となる浅宮浩典さんが技術を継承している。
家族で守る文化や技術、そこからは沼津という土地の風土と共に生きた人々の暮らしが見えてくる。
竹に囲まれた店内で浅宮さんは振り返る。
“竹屋の息子として当然店を継ぐように育てられましたからね。本当に竹に魅せられた人生です”
竹だけが並ぶショールームには浅宮さんの人生と情熱が詰まっている。
≪沼津竹材センター浅宮商店≫
沼津市港湾蛇松町9
TEL:055-962-1878