人生のリズムに合わせて暮らす場をつくること/吉川和博

沼津と富山行き来する一級建築士の吉川さん。
2017年の4月、独立をし富山にて建築デザイン事務所をスタートさせた。
現在、西伊豆や富山で設計が進行中だ。

定期的に出身の沼津にいるためお話を伺った。

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18歳の時に沼津を離れ東京で建築を学ぶ生活を始めた吉川さん。

2006年、人生の転機のきっかけになる富山市大山地域のイベント出会うことになる。
“LIVING ART in OHYAMA”という、森林の豊かなエリアならではの、木を中心としたデザインとアートのイベントだ。
20年先の未来を担う子供達が、日常的に本物のアートやデザインに触れられる場 を作り、人と智の循環を作り出すというコンセプトに共感をし大学4年生の時からボランティアとして富山に行くことになった。

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大学院、東京の設計事務所で就職をしてからもボランティアは続け4年間通うことになる。
東京では大手組織設計事務所に就職したものの、扱う建物の規模が大きく自分のスケールには合わなくて悩んでいた。
モヤモヤしている時に出会ったのが学生の頃から参加していたこのイベントのプロデューサーが発案した取り組み、「富山ウッドブロックプロジェクト」だった。
28歳、設計事務所を辞め富山へ。

富山市が進めていた期間限定のプロジェクト。このメンバーとなり富山の家具工房で「鉋 (かんな)」などの伝統的な手道具の扱い方を職人から教えてもらいながら、ひたすらウッドブロックを製作する日々を過ごした。
プロジェクトのための市の予算は一年間。

一年間はあっという間に過ぎた。
この時間だけでは中途半端だった。沢山のウッドブロックを作ったが、これらを活かすのはこれからだった。
ウッドブロックを使った提案で建築のコンペに入選したこともあり、建築やインテリアの素材として活用される可能性が出てきていた。
自力で富山に残ること決意し、塾の講師や設計事務所のアルバイトで生計を立てながらこのプロジェクトのプロデューサーのアシスタントとしてしばらく活動することを選んだ。

なぜそこまですることができたのか?

「このプロジェクトの根幹にある思想が本質的で、ここで頑張ったらきっと今までと違う道が見えてく ると思いました。自然そのものや先人達が遺した足元にある素材を見つめ直して、そこに少しだけ新しいアイデアを加えて未来へ繋げてゆくことに意味を感じて続けられたんです。」

この取り組みを通じて吉川さんは、自らの手を動かしながらものづくりをする術を身につけていった。

地方でやる楽しさは、手を上げて一歩踏み出し行動すれば、主要なメンバーとして物事に関わるチャンスが沢山ある。
そして生活も含めて都会と比べ比較的少ない資金で物事を進められることもメリットだ。

めまぐるしく物事が流れてゆく都会を離れ、ゆっくりした時間の流れの中でじっくり考え答えを見つめられる。
そうすると、流行に左右されない本質的なものの芯が見えてくる。

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高校時代から続けるバスケットボールする時間は無心になることができる

富山に移住し3年目に結婚。
そして3年間勤めた設計事務所を辞め、一級建築士として独立し富山を拠点に活動
していくことにした。
起業のタイミングで沼津で働く同級生から、沼津で行われるリノベーションまちづくりの講演に誘われた。リノベーションのパイオニア建築家の大島芳彦氏をさんの講演だった。

ワクワクすることが始まりそうだと思い、この沼津市の取り組みに富山から通いながら参加していくことになる。

地元から15年離れひさしぶりにゆっくり沼津のあちこちを歩くと、昔はとても賑やかなイメージのあった駅前も随分と静かになってしまった印象を受けた。

街への寂しさと同時に可能性も感じたという。
「何か今までに無いことを始めようという時は、それまでの枠組みや規制がハードルとなることが多々あると思います。リノベーションまちづくりの取り組みを始めとして、行政の側からそれを破ろうというしている動きがあるということに、沼津の未来は明るいかもしれないなという印象を受けました。」

独立をしたことで、今までと比べて自由に動けるようになった。

これからはもっと頻繁に富山と沼津を行き来しながら仕事ができるようになって
いけたらと思っているそうだ。

現在は西伊豆にある築90年超えの古民家をリノベーションしている。

富山で関わっているLIVING ART in OHYAMAは、これからも関わり続けていく予定だ。
この子供達を対象としたデザイン・ アートイベントは、子どもの成長と共に、まわりの人のシビックプライドの意識も高めていく。

まちは子育てをする公共空間でもある。
富山での経験も生かしなが ら沼津では仲見世などの街のエリアを使って、子供達が成長する為の空間づくりをしてみたいそうだ。
足元にある素材や空間を使って、単発的ではなく10年後、20年後を見据えて。
コトの本質がふわっと広がっていく地方らしさ。
吉川さんは界線を越えて、固定概念を越えて、柔軟性をもってコトの本質をカタチにしていくのであろう。

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アートスペースVEGA内
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