【2014年の記事です。現在は記事のサービスを施設で提供しておりません】
沼津駅から海沿いを走り西伊豆へ車を走らせると“淡島”という小さな島を見つける事が出来る。
淡島にはホテルや水族館があるが住所がない。
そう淡島は沼津にある無人島なのだ。
橋もない無人島への交通手段は船のみ。
船に乗って約5分。
右手には富士山が、左手には伊豆の山々が見える。
ワクワクしながらのクルージングはあっという間に終わり、はやる気持ちを抑え船を降りる。
と、そこにはイルカがいる。
5分前の世界とは打って変わって海や自然をダイレクトに感じる場所。
イルカのプールは海を仕切って作られており、小魚なども入り込んでくる。
そこはショーのステージにもなる。
3列しかない観客席。普通のショープールという感覚ではなく、
イルカがショーをしているところを覗かせてもらっている感じだ。
桟橋を渡り終えるとそこにはフンボルトペンギン、
奥に進むとアシカとアザラシのショープールもあった。
こちらのプールはさらに小さく、となりに座っているかのような近さだ。
ちょうどアザラシのショーが始まった。
アシカよりものんびりで地味なところがまた可愛い。
プールと小屋への通路はあり、自分で戻ることも可能だがあえて、
台車にのって退場する。
そこでもお客さんにサービスポーズ。
人とアザラシというより友達に挨拶しているようだ。
今回案内してくれたのは広報を担当する松田直樹さん。
“アシカの気持ちを汲んでショーの内容を決めていきます。
やりたくないことを無理やりやらせるんじゃなくて、一緒にやっています。
強制ではなく、今なにをやりたいか、その後にやってほしいことをやってもらったり
やりたくなる空気を作る感じですかね”
小さい水族館だが、一緒にショーをやるというか遊んでいる姿は
出来るだけ動物にもストレスを与えないようにしており、ショートとはかなりすごいということ。
大きな水族館からショー担当者が教えてほしいと連日訪ねてくるそう。
“でもあまりに楽しすぎてショーステージから帰らなくなってしまうこともあるんです。
ちょっとそれは困りますけど(笑)”
アシカやアザラシなどへの餌やり体験(有料)もある。
“餌はエサと言わないんです。ごはんっていうようにしてます。
動物というより仲間だから”
なのでもちろん、餌やり体験ではなくごはん体験だ。
イルカも同様、ショーは大体のプログラムは決まっているもの順番などはアドリブ。
“イルカの場合は3名でやっているので、司会進行役はとても難しいですね”
特にイルカは海の状態にも影響されるので失敗することも。
だが、イルカも人も楽しんでやっているショーにつられてお客さんにも笑顔がこぼれる。
ウミガメもアザラシもアシカもイルカもペンギンも手の届きそうな距離にいる。
深海魚にも触ることが出来る。
こんなにも身近に感じることができるのだから、彼らが住みにくくなるのはつらい。地球を大切にしようという感覚がより強くなる。
“水族館は学習できる場所でもあります。触ってみる体験はもちろん、POPや飼育員からのお話し、
あらゆるところのに知識が散らばっています”
松田さんは言う。
開館中にポップを貼っていた小西香代子さんにお話しを聞いた。
“こうやっていると、お客さんがどんなことを言っているのか聞こえてきます。それであ~こう思ってるんだ!
こういうところが不思議なんだってわかってそれに合わせてPOPを作るようにしてます。
自分たちは知りすぎちゃってるから(笑)”
工夫を凝らしたPOPはどれを読んでも面白い。ほとんどを小西さんが制作。
実はさかな館の責任者で館長の次に偉い方だそう。
ポップを読むとさらに観察したくなる。
ファインティングニモの影響で見たいという要望に応えた水槽以外は水族館の建物の中にいる魚は駿河湾の魚。
こんなにも鮮やか魚から深海の不思議な形の生物までこのすぐ下にいるんだと思うと不思議になる。
大水槽はとくに仕様も淡島をイメージしているそう。
もう一つ、展示種数日本一のカエル館がある。
黄色から青、赤など色とりどりのカエルたち。
元々カエルはエサになりやすいので木の陰に隠れていたり、木の葉のように分かりにくいものも多い。
そのため水槽には“●匹”とポップを貼るという工夫もみられた。
“実は子どもたちのほうがすぐに見つける事が出来るんですよ。カエルを見つけるのも一つの楽しみです。
私は田んぼでアマガエルを捕まえるのにはまってそれからカエルが好きで。専門学生の時にこちらでお世話になって晴れて4月から正式に入社が決まりました。
でも人としゃべるのもすごく好きなんです”
そう鈴木あづきさん。お客さんにもわかりやすく説明をしていた。
カエル館は島をつなぐロープウエイが閉鎖された時に陸が側に売店しか残らなかったので客寄せとして造られた。
“カエルの飼育は簡単そうだと思ってやったんですけど、片手間では到底無理なことがすぐにわかって。
でも他にはほとんどないし、力入れてやろうってことでカエルチームが出来たんです”
と松田さんが教えてくれた。
ショーも飼育もカエル館もディスプレイも試行錯誤しながらやっている。
そこには飼育員たちの姿。
“生き物との関係もそうですが飼育員同士もメリハリを大切にしています。
仕事の時は仕事ですから何かあれば怒ります。でも業務が終わったり、休みの日は●●行こうか~と話したり。
人も動物も褒められるとうれしいし、一緒に楽しめればたのしいので”
アシカ・アザラシチーム責任者の遠山忠晃さんは言う。
実際に飼育員室にお邪魔させていただき写真をお願いしたら
みんなでコントが始まった。
≪左から鈴木あづきさん、遠山忠晃さん、松井若菜さん、山本祐樹さん、鈴木芹菜さん、前列に松田直樹さん≫
大好きな生き物たちと大好きな仲間たちと一生懸命働いているということが伝わってきた。
それはお客さんの笑顔になって帰ってくる。
淡島マリンパークはどんな水族館よりも海の仲間たちを近くに感じることが出来る。
まるで自然の中のいち生き物としてその場に立っているような感覚に陥る。
この海の下はこうなっていたんだと初めから知っていたかのように。
明るく楽しい飼育員たちがいる水族館は生き物を檻に閉じ込めて鑑賞するのではなく、
出来る限り同じ目線で同じ生き物として触れ合うことが出来る水族館。
沼津駅からわずか30分で行くことが出来る無人島には、海の魅力がつまっている。
≪淡島マリンパーク≫
沼津市内浦重寺186
TEL:055-941-3126
http://www.marinepark.jp/
●営業時間:9:30~17:00(入園は15:30まで)
●入場料:大人1,600円、子ども800円
※天候などによって変更がある場合がございますので淡島マリンパークのHPでご確認ください。