美術館でもない、文学館でもない“ことば館”とは~大岡信ことば館~

三島駅北口を出て右手に進むとZ会の大きなオフィスビルがあり、この1,2階に“大岡信ことば館”がある。
ここは“ことば”に包まれ、“ことば”を感じられる場所だ。

ookamakoto5

大岡信(おおかまこと)は三島市生まれの詩人・批評家だ。
明治大学、東京芸術大学の教授、そして日本ペンクラブの会長も務め、日本語が持つ可能性を追求し日本文化に大きな影響を与えている。

大岡信と通信教育事業を展開し長泉町に本社のあるZ会はもともと親交があり、三島に建てられるビルにことばの魅力を伝える場を作る事に。
そうして2009年、三島でこの「大岡信ことば館」が開館する事となった。

開館当初、来場者は朝日新聞で29年の間に6762回連載をしていた「折々のうた」を通じて大岡信に馴染みある年代の方が多かったそうだ。
4年が経ち今では大岡信を教科書で知る世代も増え、来場者の半数が若者となった。
たまたま来た大学生が「こういう所だと思わなかった!」と驚いていたそう。

「こういう所」とはどういう所か。
“美術館でもない、文学館でもない”という今までになかった“ハコ”なのだ。

この“ハコ”を知るキーワードとなるのが館長であり造形家の岩本圭司さんだ。
キーマン岩本館長にお話しを伺った。

ookamakoto3

“ことばというのは、文章のことばだけではありません。音楽、美術、身体表現にもつながります。
 そして、「伝えよう」という役割も。
ここは、ことばのもつ広い範疇を体験し、楽しむところです。
「日本語」を愛した大岡信とつながるコンセプトなのです”

大岡信ことば館は、ことばを体感できる場所なのだ。

入るとまず、大岡信の著書が展示され、これまでの活動を知ることができるコーナーがある。

大岡信1

その奥には2階まで吹き抜けた空間の壁一面に大岡信の歌。
白い壁に白い文字が張り付いている。

ookamakoto1

光があることで“文字を読む”ことを体感する。
この広い空間にはもともと琵琶の演奏用に作られた椅子が置いてあり、
この椅子にも座ることもできる。

座って壁を見る。また違う見え方がする。

ここでは、過ごし方に制限がない。
フロアには座布団がおいてあり、寝っころがっても、座っても良い。
一人ひとりに与えられた空間は無限に可能性を広げる。

ぴかぴかに磨かれた床に座ってみると
また違う世界が見える。

大岡信6

“言葉”を意識してくると全然ちがう“ことば”に出会ってしまう。
それは紙の上に並ぶ文字ではなく“ことば”という生き物を感じた。

今開催されている「聞くことはさわること?展」
では音としてのことばを展示している。

大岡信4

高校生からNHKアナウンサーまで声で活躍する方々が朗読した詩が展示されている。
前代未聞の音の展示は期待を裏切らない仕様だ。
会場に設けられた5つの音響空間。
大岡信の詩とそれぞれの朗読がその場に立つ一人ひとりに向かって響く。

こうしてフロアを見て回ると最後に細い通路を通り
壁に張り付いて、壁に張り付いた詩を読む。
そして通り抜ける。

まるでおとぎ話の世界に行った後、日常に戻る路のように。
ただ、それは名残惜しいものではなく、
現実世界で出会う“ことば”によってワクワクするようなものなのだ。

このような“ハコ”ができるまで、展示方法を見出すまでに
2年を費やしたそうだ。
造形家の館長だからこその発想でコレクションを並べるだけではない今までにない空間が出来た。
毎回展示は館長が考え、そしてスタッフの皆さんで手作りで造り上げるそうだ。
コンセプトによって考え抜かれた空間、そしてひとつひとつの詩、その展示方法までしっかり味わってもらいたい。

ookamakoto2

また『大築勇吏仁―記憶と現在―展』も同時開催されている。
大岡信の影響を受けた画家だ。
ここでは大岡信に影響を受けた人が多くいる事を知り、文学だけではなく心を潤す芸術にも出会える。

次回の展示について館長からこのような言葉を頂いた。
“次の展示は来場された方もこの企画展の一部になります”と。
少し展示方法などは聞いたがあえて伏せておきたい。
なぜなら、私と同じ驚きをしてほしいのだ。

“ことば”をどう感じるかは自分次第。
ただ、実際にここに行って感じる事で
身近な“ことば”が明日から変わるかもしれない。

そして大岡信の作品の中には“水”という言葉も多く出てくる。
柿田川や源平川などの清流のある三島で育ち、狩野川や千本浜と水の豊富な沼津で青春時代を過ごし生まれたことば。
そんなこの土地によって生み出されたことばに出会い、その余韻に浸りながら三島、沼津の水を巡る旅もおすすめだ。

IMG_6628

大岡信
1931(昭和6)年、三島市生まれの詩人・批評家。歌人の父と明治から昭和にかけての歌人窪田空穂の影響を受け、沼津中学時代に作歌・詩作を行った。
その後、東京大学に進学。在学中に「現代文学」、卒業後「櫂」に参加し、「シュルレアリスム研究会」「鰐」を結成。
読売新聞外報部勤務を経て、明治大学・東京芸術大学の教授を務める。
詩と批評を中心とした多様な精神活動を行い、数々の賞も受賞している。

≪大岡信ことば館≫
三島市文教町1-9-11 Z会文教町ビル1・2階
TEL:055-976-9160
午後10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
http://www.zkai.co.jp/kotobakan/


大きな地図で見る

【HPに戻る】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>