狩野川の魅力を発信し続けるカヤックタパ自然学校のタパさんこと上野裕晃さん。
牛臥海岸近くの事務所を拠点にカヌーインストラクターとして狩野川や駿河湾をより身近に感じられるよう活動を続けている。
タパさんがカヌーに出会ったのは30年前、26歳のとき。ディンギーと呼ばれる小型ボートこそやっていたがカヌーに触れたのはこの時が初めて。
それまでは住宅用のサッシを販売していたが、会社員と並行してカヌーのショップを始めた。
42歳のとき、会社員を辞めカヌーだけで食べていくことを決意。
決意を込めメキシコへ旅に出た。このとき、鍋のふたの意味を持つ“タパ”をフィールドネームとした。
“鍋のふた”をあけるとそこには美味しいものがある。
スペイン語のふたを象徴とし、自分の使命として名付けたのだ。
川という場所でカヌーに出会うと素晴らしい自然に出会える、そんな機会をつくる存在になる。
だから、上野さんことタパさんははじめてカヌーをする方にやさしく自然の事を教えてくれる。
最初は不安だらけだった。
沼津リバーサイドホテルの目の前で、狩野川を使いカヌー体験を始めるようになった。
それでも、最初は年間20名しかお客さんはいなかった。
いろいろな場所で水の可能性を確かめた。情報がまったくない。
静岡東部の様々な川や海で、ひとつひとつ体を動かし可能性を確かめていった。
開拓の日々。
タパさんの想いとは反して、川に浮くカヌーを異質な存在を捉えていた方も多かったようだ。
川に対する意識がなく、川に近付きバーベキューをやる人は川を汚す。
河川管理者の行政からもタパさんの活動も同様に見られていた。
そんな中でもカヌーフェスティバルなどを催し、川に多くの方に親しみをもって頂きゴミを拾うイベントを12年おこなった。
長くやっていると世代に受け継がれていき、想いは文化となっていく。
そして、行政もお互いに歩み寄っていった。
そんなタパさんの原風景ともいえる少年時代のことを訊いた。
“アウトドアというか外で遊ぶのが当たり前でしたね。
学校終わったら外に遊びに行って、夕暮れに家に帰るのが通常のパターンでした。
怪我したら自分の責任。そういうのが当たり前の時代でした”
今は怪我をしたら誰かの責任になってしまう、それは親が遊び方を知らないからだとタパさんは言う。
火を見たことがない子供に火は熱いということを伝えていくこと、それが自然の中での応用力を生む基礎になるそうだ。
“大人になってからの遊びはお金を出せばいくらでもできる。子供のころに他愛もないことでいいから野外で遊ぶことが必要なのかもしれない”
カヌー体験やスクールなどを通じて自然体験の大切さを伝える。
2~3時間の体験で大人も子供も笑顔になる。その笑顔を見れるのが一番うれしい。
20代の頃、漠然と思っていた狩野川をカヌーでいっぱいにしたいという夢。
30年経った今でも変わらないモチベーション。
タパさんは、昔の大変だった頃を改めて思い出した。
“川は楽しい!自分が楽しいと思うからみんなも楽しもうよ”
一方的な想いだったかもしれない。
“川を通して笑顔が溢れる時間を提供するには……”
相手の立場にとっての川という存在を意識するようになった。
そして、沼津ビーチフェスというイベントも4年前から始め、海の使い方も提案をしている。
まだまだ市民の認知度は低いがタパさんの夢は変わらない。
“自然をもっと身近に”
タパさんの想いは常に水辺と共にある。
≪カヤックタパ自然学校≫
沼津市下香貫柿原2814-20
電話:090-1283-0840
http://www5a.biglobe.ne.jp/~uenohiro/