“やっぱりどこかで誰かが本物をつくっていかないと”
沼津の干物といえば全国に通ずるブランドである。そこには生産する“人”がいて、その人の“想い”がある。
その声を届けたい、そんな気持ちで志下にあるマルハチ金龍丸水産にお邪魔した。
応対していただいたのは代表の濱道本臣さん。一見強面だが(失礼!)干物に対するこだわり、熱い気持ちがビシビシ伝わってくる。
●まずどうして沼津で干物が発展したのか教えてください。
「沼津は干物が発展するのに立地条件がいいんです。
日照時間や湿気、あとは浜風!僕が調べたところ、技術的には小田原から伝わったそうです。
家内生産みたいな感じでやっていたものを改良して、いかに効率をあげるかやったひとが沼津にいたんです」
●へえ!ルーツが小田原にあったとは!知りませんでしたね。濱道さんは干物の本場である沼津から本物が失われていくことに危機を感じたそうですね。
「全国シェア90%以上を誇った沼津の干物が現在は30%以下に落ちています。
それは技術が失われ、生産性を求めた結果なんです。
原点に戻って、沼津の干物って何か考えたときに、やっぱり沼津の立地条件なり、
培ってきた技術を活かしていくしかないと思って取り組んでいるんです」
●道具にはこだわっていると聞きましたが。
「例えば包丁でも、アーケード街の正秀さん(正秀刃物店)あたりが干物を作るのに適したかたちや大きさ、
厚さなど工夫してできあがったんです。包丁一つにしてもいろんな意見がかたちになって僕らはこうして使わせてもらっているんです」
●なるほど。では、塩や醤油、味噌あたりの素材はいかがですか?
「そう、塩はベトナムの塩を使ってます。
100%天然海塩。ミネラル分が90種類ぐらい含まれてるからすごくおいしいの。
岩塩よりおいしい。いろんな塩を試した中で一番魚のおいしさ、旨味を引き出してくれたね。
醤油は魚に一番浸透しやすいもの、埼玉の弓削多醤油(ゆげたしょうゆ)を使ってる。
いい醤油になればなるほどちょっとつけ込むことによってどんどんおいしくなる。
味噌に関しても魚に合うものを選んでる。全て試してみてまだまだ探求中といったところです」
●本物の干物を作ろうと決意した濱道さんの情熱が伝わるお話ですね。
「皆さんが食べたいもの、ここのだったら食べてみたいなと思うものを作りたい。
量より質といったように干物屋がなっていかないと生きていけないんじゃないかな?
干物って“文化”だよね。沼津に住んでいる人でその文化を感じている人が何人いるのかなと思って」
●たしかに。地元だから気づかないこともありますからね。
「作る側にも問題があって。文化ってうたうんであれば作ってる側のモラルも必要になる。
やっぱりどこかで誰かが本物をつくっていかないと」
金龍丸水産は様々な魚を干物としている。
つぼ鯛、駿河湾金目鯛、するめイカ、ほっけ、アジ、サバ。
9月12日から14日にかけて中央公園にて行われる沼津自慢フェスタ2013では、
この時期おすすめの干物を焼いて参加する。
「ズバリ、本物のおいしさをお届けいたします!期待していてください!」と濱道さんは意気込みを語った。
逸品の干物と白隠正宗でグイっと!
日本酒好きも楽しめるイベントになりそうだ。
マルハチ金龍丸水産
静岡県沼津市志下785
電話:055-932-2487
http://www.kinryumaru.jp/