沼津の新仲見世商店街を歩くと昭和10年に開店したケルンという喫茶店。
店内は昭和の物であふれ懐かしさを感じさせてくれる。
先代はバーテンダー協会に所属し、おしゃれな場所として地元や東京からふらっと遊びに通う〝ハイカラ〟なお客さんで溢れていたという。
その中には音楽関係者も多かったようだ。
美空ひばりと一緒に「三人娘」として活動していた江利チエミさん、雪村いづみさん。
また三國連太郎さんと親しかった太地喜和子さんなどもこのお店に通っていたようだ。
街を歩くと三國さんの話題も多く出る。ダニエルという喫茶店でもお客さんが三國さんのよく通っていたお店の事を話していた。
蕎麦はおく村、寿司はすし処古川、珈琲は花野子、うなぎはうなよし。
仲見世のマルサン書店にもよく立ち寄られたようだ。
そこで三國さんはビジネス書や歴史の本を買っていったそうだ。
店長さんいわく自然に書籍の前に「いる」そんな感じだったそう。
ちなみに今マルサン書店では、三國さんの関連書をおいている。
狩野川沿いのお店によく来られていたようだ。
どんぶりから飛び出した天丼を普通のお客とし、自然においしそうに食していたそう。
その何気なさが心地よい空気だったように思う。
東急ホテルの日本料理 かの川。
燦々ぬまづ大使に就任されたときに利用されたそう。
三國さんは過去6回ほど大使に選ばれている。
おかみさんが三國さんの印象を語ってくれた。
とにかくかっこよく、80歳にして背すじがピンしており
いくつになっても男性的魅力が絶えず素敵な人だったようだ。
さらに、いつもお昼の会席だったらしいのだが、
きれいに全部召し上がっていたそう。
ハードな役者さんイメージだが、
実際はそうではなく、とてもやさしく接してくれる方だったそうだ。
ブルーウォーターにもなんの前触れもなくフッと現れてたようだ。
狩野川をながめながら食事やショッピングが出来るこの場所。
東京からのお客様をつれてきてご飯を食べたり、
のんびりと川を眺めながらコーヒーをのみながら何をする訳でもなく過ごしたり。
一人で車を運転してやってくる、80のおじいさんとは思えない好奇心と行動力。
かっこいいの一言につきる。
威厳はあるけど腰は低く飾ってないけどおしゃれでとても気品があった三國さん。
オーナーの天野さんと
沼津をなんで選んだのかという話がでた。
もちろん、東京に近くアクセスもよい、自然がたくさんある適度な田舎ってこともあるが
中学時代に伊豆ですごした三國さんにとって沼津はあこがれの地だったんじゃないか、
そして最愛の母のを散骨した海を眺めることの出来るところに住みたかったんじゃないか。
きっとどこでもいいけど、いろいろな要素が相まってここ沼津に「居場所」が出来たんだと思う。
海を楽しみ、川を楽しみ、街を楽しみ、食を楽しんでいた。
どこで聞いても
三國さんは「自然」に沼津にとけ込んでいた。
きっとこの自然な感じが「三國連太郎」として生きることを決めた三國さんにとって
本来の佐藤雅雄がこころの隅っこで生きていることを確認できたところなのかもしれない。
近日、上土商店街のリバーサイドホテルでは商店街に飾られた三國さんが描かれた何個かの絵馬が飾られる。
この絵馬を見ながら三國さんの過ごされた沼津を歩くのは如何だろうか。