焼き肉やの看板の横にもう一つ
ギャラリーの看板がある。
何ともアンバランスな看板の先を覗くと無数の絵が並ぶ。
張り紙を見るとどうやらこちらは入口ではないようだ。
店の横の狭い通路を覗くと“ここから”という文字が見える。
その文字に導かれ進むと普通の玄関が。
チャイムを鳴らしてみたが壊れているようなので
おそるおそる開けてみる。
すると奥から人が出てきた。
拍子抜けするほど明るく迎えてくれた。
どんな人が出てくるのだろうと身構えていたのでほっとした。
このギャラリー木耳の画家、本田照男さんだ。
室内には沢山の絵と画材が所狭しと置いてある。
もともと焼き肉店だった店内の一部なので
換気扇カバーがついたまま。
友人が送ってくれた画集をきっかけに
60歳になって急にどうしても絵を描きたくなり
焼き肉店を辞めた。
そこから8年間、365日絵を描き続けている。
細いペンを中心に、アクリル絵の具、油絵具、そして鉛筆やパステルなど子供も使うような画材を使い
細かい線が特徴の絵を多く書く。
モチーフは自然が多い。富士山も多く描かれていた。
“人は生きていると不安やつらいこともあります。でも私は絵を描くと心が落ち着き静かになる。
そうすると絵を描く対象をじっと見る。昆虫の模様の美しさ、山々の壮大さなど自然ってすごいな~と思う。
それが楽しい”
絵を描くことで季節の移ろいを敏感に感じることが出来る。
43年間続いた焼肉店。
沢山の人に支えられ人気店だったそう。
今もまだ間違えて予約の電話が来るほど。
その看板とともに新しい視野が広がる画家活動。
繊細で、でも力強く、カラフルな色が心を躍らせる本田さんの絵は
恵まれた自然がある沼津にいることを教えてくれる。
“ここ”というランプが光っている日はアトリエにお邪魔することができる。
もちろん絵の購入も出来るそうなので気になる絵があったら相談してみるとよい。
嵐の日は嵐の日らしく美しい。
春の日は春の日らしく美しい。
60歳から始めた絵は歳なんて関係なく
来る日も来る日も発見し、敏感に美しさを感じている。
≪ギャラリー木耳≫
沼津市旭町42-6
TEL:055-962-9800