あまり知られていないが沼津は全国でも有数のぐり茶工場が密集している地域だ。
ぐり茶は、一般的な煎茶と違い荒茶製造工程で茶葉を傷めることなく 「ぐりぐり」とした丸みのある形が仕上げるために、
フォークや歯ざらいなどは無く、優しく茶葉を傷めることなく風と熱風を送り乾燥させる。
そのためお茶の成分が浸出しやすく、「甘さ」と「まろやかさ」と「味の濃さ」が、口の中に残り柔らかく広がるとても美味しいお茶だ。
更に、ぐり茶は蒸す時間を煎茶の2倍から3倍にすることにより、豊富なミネラルなど健康には欠かせない成分を、
急須に注いでから短時間で取り出すことができる。
手に届く価格帯のぐり茶。
独特の手法で作られたくるんとまるまった茶葉は熱いお湯を注いでもおいしく出すことができるし、
3煎、4煎目までおいしくいただくことが出来る。
このぐり茶を専門としている五十鈴園の代表を務めるのが鈴木崇史さん。
若干25歳の鈴木さんは今年でお茶作りを初めて3年目だそう。
今はお茶のオフシーズン。
だが毎日畑に行って整備をしているそう。
大学は工学部に進学。
お茶の機械については多少分かることもあるそうだが
お茶づくりについては何もわからなかった。
そんな鈴木さんがこのぐり茶園に携わる事になった理由。
そこには最愛の父の死があったそう。
両親は3人の息子に自由に好きなことをして継ぐことにするかどうかも自分で決めていいよと言っていたそう。
そのため三男である鈴木さんも家を継ぐことは考えず進学をし、就職をしようとしていた。
だが突然の不幸。
その時、祖父や父が守ってきたものを見つめなおし、
このままなくなってしまうのは嫌だと思い、就職はせず実家に戻ることにした。
父が亡くなる前日、たまたま畑を手伝っており一緒に茶葉に触れ合っていた。
今、父のいない畑で一生懸命、周りの人たちに教わりながら、そして助けてもらいながら5.5丁もある畑でぐり茶を作っている。
農業離れがすすむ中、2代目、3代目としての役割を果たそうと、
農業へ若者が入りやすくするため色々な取り組みを始めた。
その1つとしてスタッフの採用は自分のホームページ上で行った。
求人サイトはお金がかかるからということもあったが
それ以上に自分の言葉で人を集めることにした。
そのかいあって、頼もしいスタッフが入った。
星さんだ。
星さんは山小屋で働いていたり、海外を旅していたりとアグレッシブな方だ。
四国か靜岡に移住したい、そして農業をしたいという気持ちがあったそう。
そんな中、五十鈴園を見つけ、靜岡に移住することにした。
実際やってみて思っていたよりも重作業が多くびっくりしたそう。
そして、五十鈴園ではお茶を作る過程、そして工場を持っているの加工、さらには車にお茶っ葉を積んで全国へと売りに歩くところまで
鈴木さんを中心に星のサポートの元、みんなで力を合わせて取り組んでいる。
茶摘みの忙しい時期には仲間たちが手伝いに来る。
同年代の若い人たちが茶摘みをする風景はなんも清々しい。
自分たちが見える世界を、お茶の世界を記録に残し、伝えるべく
映像作りの準備もしているそう。
やっている人だからわかる目線。
”自分の場所で繋がりが出来てくることが嬉しいんです。
僕は農業がカッコイイものだと思ってなかった。でもやってみるとつらいけど楽しい。
同世代や若い人たちがやってみたいなと思うようなことをやっていきたいです”
と鈴木さん。
お茶も急須にお茶っ葉を入れて2煎、3煎と飲むことも減ってきている中、
家庭でも手に取りやすいお茶を作るように広い面積でたくさんのお茶を作っている。
ご飯の時、お菓子を食べる時、喉を潤す時など様々なときに活躍するぐり茶。
お茶を淹れる時間が守られるのも次世代の力にもかかっている。
そんな頼もしい笑顔がこのぐり茶にはある。
《五十鈴園》
沼津市東原491
TEL:055-966-1975
http://guricha-isuzuen.jp/