沼津駅から約30分海沿いを南下すると大瀬崎という場所がある。
国道から海へ下ると数件の旅館やダイビングショップが並ぶ。海越しに富士山と沼津の町並みを一望でき、小さな湾になっているのが特徴的だ。
大瀬崎は言わずと知れた日本有数のダイビングスポットだ。
内海、外海、岬と生態系が違い同じスポットでも違う生き物を見ることが出来る。また湾になっていることで風の影響も受けにくくビギナーからプロまで楽しめるスポットなのだ。大瀬崎でのダイビングを支えてきたのが大瀬館の安田幸則さん。今、大瀬館マリンサービスでは新しいスタッフを募集している。
大瀬館は先代が60年前に旅館を開業、安田さんは否が応でもここを継ぐこととなる。
23歳の時に東京から帰ってきたが、何も無い大瀬崎でこれからどうしようと途方にくれたそう。7年後、ダイビングのサービスを始めた。それから35年ずっと大瀬崎は今も人気のスポットとして有名だ。
「ダイビングのサービスが35年も続くと思わなかったんだよね。僕は10年くらいでだめになると思ったんだけど、こんな長く続いたからね、とてもありがたいといった感じです。」
元々安田さんはダイバーではなかった。東京のダイバーたちが海に入ることを漁協に行って交渉したという。
「地元の我々はお客さんに“勝手にもぐってはだめだよ、漁協とちゃんと話ししてきたのかね?”というと、“してきた”と。漁協が旗もくれるって。それだったらいいだろうと思って。我々は関わらずにお客さんが勝手に交渉して勝手に潜って。お客さんが開拓してくれたんだよ」
お客さんの気持ちがわかるようにとご自身もダイビングを始めた安田さん。
「初めて潜ったとき、そりゃ感激しましたよ。ストレスがさーっと吹っ飛んじゃって。その感動はね頭の心から身体にしみ込んでいく感じだね。ダイビングに夢中になる人たちの気持ちがわかったんだよ。」
海の下の別世界はずっと海と寄り添って生きてきたひとにも衝撃を与えた。
その頃、大瀬崎でダイビングをしている所はなかった。お客さんに勧められた沖縄の西表島にすぐに行き勉強した。
「お客さんがみんな教えてくれました。必要な物は何ですかってお客さん聞いて、それをちょっとずつだけど揃えていきました。)
いっぺんに百人きてもいいように機材を揃えちゃったから、あとはやるだけだったよね。」
お客さんが作ってくれた道を支えていかなければいけないと、お客さんに寄り添いダイバーとしても大瀬崎の海を感じる生活を続けた。
「けんかもしたよ。色んなことがあった。
先日、市の人からおかげさまで沼津にはダイビングポイントが7カ所もあると言われたんだ今は当たり前のようにみんながもぐっているのが僕は嬉しい。
もし漁協がダイバーを裁判にかけたら、裁判を受けて立つ役割だよって、
一人一人のダイバーではなく商売をしている我々だと。
幸いにもそんなことはなかったけどね。そういう覚悟だったんだよ。」
歴史のある大瀬崎のダイビング。
それでも年々ダイバーは減ってきているという。
「大瀬崎の海の魅力を改めて発信していきたい。海の中の世界に感動し、魅せられた想い伝えたい!という方にスタッフになって頂けたら…」
ダイビングを経験したことのない人も始めはボンベの空気を圧縮して充填するなど仕事はある。そういう作業をしてもらいながら将来的にはダイビングを覚え、インストラクターまで養成していくつもりだそう。その気があればゼロベースからインストラクターまでなれるそう。経験問わず海が好きな人を募集している。
現在マリンスタッフは3名。
スタッフの2名にお話を伺った。
6年目の堀口さんは東京出身。以前は鹿児島のダイビングショッピで働いていたが大瀬崎の海に感動し、大瀬館マリンサービスに就職したそう。
「大瀬崎は施設がちゃんと整ってますし、風の影響も受けにくくダイビングしやすく珍しい生き物も多いのでカメラマンの方から初心者の方までたくさんの方が全国からいらっしゃいます。生き物好きとか水族館いったりするのが好きで元気よく接客できる人がいいですね。ダイビングはやっていけばうまくなるんで。」
堀口さんはこの日もお客さんと一緒にどんな魚が見れるのかなど色々と話していた。
また昨年研修生として学んでいた福井出身の熊谷さんは今年の4月より社員となった。
「毎日ダイビング、ダイビング漬けの生活ですね。常連さんとの会話も楽しいです。好きなことして、本当にそれだけですね。学生の頃は神戸だったので何も無い大瀬崎での生活は大丈夫かなって思っていたんですけど、ここは海好きな人にとっては最高の場所ですよ。」
二人とも大好きな海に囲まれ“幸せな環境”で仕事をしていることが伝わってきた。
本人のやりたいことを尊重しながら、海を楽しむ環境をつくっている大瀬館マリンサービス。安田さんは現役は引退されたそう。
今はお客さんと海に一番近いスタッフの意見を聞き運営している。
「後継者をつくりたい。今後どうしていくかは模索中で、もちろん今まで通り受け入れて、安全にもぐってもらうっていうことをやってくだろうけど。途絶えさせさたくない。とにかく海が好きな人に来てもらいたいですね。」
日本一深い海、そして日本一高い富士山に囲まれた海。豊かな自然のある大瀬崎を好きな方に囲まれた場が職場となる。
大瀬館
http://oosekan.jp
〒410-0244 静岡県沼津市西浦大瀬325-1
055-942-2220
大瀬館マリンサービス
http://www.fuji.ne.jp/~osekan/