沼津港から海辺を南下していくといくつかの漁港が連なる。
沼津の漁業を支えるそのメインに養殖がある。
かつて真珠の養殖、ハマチなどの養殖から始まり、一時期は静浦地区から江梨地区までいけすが並び、約200件もの経営体があったそう。
しかし、魚の消費量の減少、環境の変化、販売先がないなど様々な要因の中、今は15の事業者にまで減った。
その中で1960年から養殖業を営む株式会社マルセイ水産は沼津でも中心となる養殖業者だ。
マルセイ水産は沼津駅から車で約30分、西浦地区の港を拠点としている。
社長の眞野幸正さんは両親の始めた養殖業を大学卒業後に継いだ。
今はハマチや鯛などの海面養殖、沼津にある直営の飲食店《真鯛》、釣り堀を経営している。
そんなマルセイ水産では従業員を募集している。
社長の眞野さんは言う。
「養殖をやりたいという若者が居なければ事業を終えようと思います。」
養殖の難しい点、それは買い手市場なところ。1匹を育てるのに1年半かかり、そこには莫大な投資が必要だ。昨今は輸出の関係もあり少しずつ売れていくだろう言うがやはり買い手市場が変らない限り難しい業態だ。
「なかなか事業としては特殊だし、よっぽどやる気がないと。だけど自分の育てたものをみなさんおいしいっていって食べてもらえば有難いし。若い連中が来てくれればがんばる気にもなる。」
現在マルセイ水産には社員が6名、直営の飲食店は2名従業員がいる。そのうち60代の一人を除いて全員が20代。
この春には新卒の社員も入社する。今後も養殖業が継続されていくためにも若いアイディアや力が必要だという。
山梨県など県内外から集まる彼らの為に、沼津中心街に寮もある。
職場では駿河湾や沼津アルプスなど豊かな自然を感じ、仕事が終われば沼津の街を楽しめる環境だ。
養殖はどこで育てたか、どのようなものを食べていたかが明確なので安心感もあるし、年間を通じて安定供給ができる。
マルセイ水産では良質なエサを使い、品質向上の努力をしている。
だからこそ売り先が大事だという。価格競争に淘汰されない売り先。
そのために始めたのが飲食業。
沼津の中心市街地に《真鯛》という店を構えた。そこでは美味しい養殖の真鯛を味わうことができる。刺身はもちろん鍋や塩竈焼き、鯛飯など様々な料理を楽しむことができる。
この店舗をきっかけに沼津産の鯛を普及を目指す。
養殖現場の繁忙期は5月から12月。忙しい時には休みもないこともある。
しかし、冬場は日の入り前に終業することも。養殖とはいえ、自然海の中に生け簀を構え、相手は生き物。
日々天候とともに臨機応変に対応して行かなければならない。必要となるのはその時々での各自の状況判断。
言われたことだけをやるのではなく、自分で先を考えて行動することが大切だ。先輩達のやる事を見て覚えていかなければならない。
さらに、未来の水産業、養殖業を考えていくことも重要だ。
自然、生き物を相手にした仕事は、昨日良くても今日はだめということが当たり前だ。それをすぐに分からなければならない。その状況に向き合い判断していくこと、絵で覚えるような、イメージが出来ることが大切だという。
「魚が好きでやる気のある人。単純にそれくらいだと思う。やる気のある方が来てくれれば、どんどん仕事も覚えてもらって、好奇心をもってがんばってもらいたいね。そして沼津産の鮮魚の良質な価値も一緒につくってもらいたい」
沼津、そして日本の養殖業を支えるマルセイ水産。
色々なアディアをもってどんどんチャレンジしていきたい人にぴったりだ。
株式会社マルセイ水産
静岡県沼津市西浦足保31-2
TEL:055-942-2096
http://www.maruseisuisan.com