駿河湾を泳ぐ沼津のしらす【静浦漁協】

沼津には4つの漁協があるのをご存知だろうか。
そのひとつ、沼津港から戸田へと続く海岸を車で15分ほど走ると静浦漁協のある漁港がひっそりとある。
そして、あまり知られていないが良質な「静浦しらす」の漁が行われている。

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お話を伺ったのは静浦の多比地区でしらす漁をして3代目になる綾部通雄さん。
綾部さんは水産学校を卒業後、巻き網漁の小型船で約5年の修行を経て、実家の家業を継いだ。
現在はしらす漁、釜揚加工、そして遊漁船業も行っている。

静浦漁港では巻き網が衰退してきて、しらす漁が注目されてきた。
奥駿河湾は漁獲量に波があり水揚げ量は決して多くないため産地としてはマイナーであったが、良質なしらすが獲れる。

この地域の水深は急に深くなるため、静浦地区では60m〜70mの深さで獲る。
水深が低いため水温が低く身も引き締まっている。
春のしらすは水温も高いので柔らかく水っぽいのに比べ、秋のしらすは身が引き締まっていて美味しい。
駿河湾という富士山からの水が流れ込む日本一深い海ならではの豊かな海も美味しさに拍車をかけているようだ。

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一つ驚いた事がある。
しらすといえば真っ白く小さいのもがいいと思っていたのだが、
本当は真っ白ではないらしい。
大きさも自然に獲れるもんだから小さいのから大きいものまでいる。
綾部さんの所では獲れたてをそのままを釜揚げにするそうだ。
「真っ白ではなく大きさもバラバラのしらすは市場ではニ級品かもしれないけれど、味的には一級品だと思う。美味しいと言われると思うんだぁ。」
と語る綾部さんの顔には沼津にある「本物」を食べてほしいという想いを感じた。

綾部さんは沼津にある4漁協の50歳未満の若手で構成されている沼津市青荘年部にも所属している。
組合を超えて、海を自分たちの手で盛り上げようと活動しており、マダイやヒラメの放流や幼稚園に出向き魚のことを話したりしている。

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綾部さんは青荘年部の会長を6年務めている。
沼津の漁業の現状は巻き網漁の衰退や跡継ぎの問題で、少ない水揚げがより少なくなってしまう。
組合の危機、存続をかけて漁師たちが自らの手で本来の”漁師が漁をして暮らしていけるよう”に、「海を自分たちで盛り上げよう!」と活動をしている。

きっかけは研修旅行。
千葉の漁港で小さな組合が直営食堂を始めていた。
そんな姿を見て
「自分っちの手で何か出来るんじゃにゃあきゃ」と思い、青壮年部の若い人たちに「俺たちに出来ることは何がある?」投げかけ、話に出たことを全部やってみた。
まずはわかめの養殖にチャレンジした。
どうやってやるべえか?どうやって売るべえか?どうやって広めるか?
と手探りで一つずつやった。

「すげえ感動したことがあったさぁ。ここで(静浦)おばあちゃんがしらすを加工しているのに興味を持った沼津商業高校の生徒さんが、過疎化するここを元気にするために『しらすのキッシュ』とかいうやつを開発して
“静浦のしらす”って発表してくれて! 
自分たちもしらすで何かやらねべと思い、がんばろうと思った。」

何度も綾部さんは「自分達で頑張る」と言っていた。

「自分はなんでもやってみにゃあとわからない。だからとりあえずやる。
未知の世界の話をしてもなんにもならない。
文句を言われようがやってみることに価値がある。
やってみてうまく行かないで終わることもあるかもしれない、それでいい。もし先で若い人たちがやるときに役に立つ、出来ると思う。
後継者がいない。それでも若い人はいる。若い世代が食えねえってならないように、儲かる基盤をつくってやんなきゃ。
いいもの漁るべえかって自分たちも思っている。人が少なくて大変だけど頑張って行こうみんなにそういう気にさせる。
それが海につながって行くんじゃないかな。」

私たちの目の前には当たり前のように海があり、豊かで美味しい海の幸があり
それを当たり前のように食べる。
それがどれほどありがたいかということ。
そして、スーパーの売り場ではわからない「本物」を見た。

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最後に綾部さんは50歳になっても夢はあると言った。
「湘南とかでやってるみたいに販売所をつくりたい。道沿いで釜揚げしてる所をお客さんが見て、今日は茹でているなーって買いに来る。いいと思わない?」
駿河湾のようにふところの深い綾部さんの優しい男気にふれた。

ここに来れば本物の沼津のしらすに会える。本物の漁師に会える。
綾部さんや漁協のみなさんの男気がつまった本当においしい静浦のしらすを食べてほしい。

静浦漁協で釜揚げされたシラスは、漁協の直売店で
購入もできる。

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また静浦漁ではしらすが美味しい時期に“しらすフェス”が定期的に行われる。
春は5月21日(日)・22日(月) 6月18日(日)19日(月)に開催される。

●静浦漁協 
〒410-0104
静岡県沼津市獅子浜243-1